やって来る客らの面々も多種多様だ。坂本九の曲「上を向いて歩こう」を流暢に歌う外国人もいれば、太極拳の教室帰りの人たちもいる。地元の神輿の担ぎ手たちもやって来る。
店が混んでくると、がっしりした体格の店主が客の間を通り抜けられず、「ごめんよ、ちょっとそれ取って」と客に頼むこともある。そうすると、「あいよ!」と客がグラスをリレーしたり、冷蔵庫を開けて新しい缶を取り出したり、“阿吽の呼吸”の連携プレー。
客同士もみな仲良しだ
店名物の遊びもたくさんあるという。常連の誕生日にはみんなでじゃんけんをして勝った人が全員にお酒を振る舞う「男気じゃんけん」をしたり、「当たると一杯無料のくじ引き」をしたり。「大当たりぃ~なんてまた盛り上がっちゃうわけ」と”ぼくちゃん”は笑顔で教えてくれた。
「店が休みの日だって、ボウリング大会、釣り大会など、充実した遊びのプログラムがあるよ。すっかり、いい大人の遊びの拠点になっちゃったね」(店主)
常連客ばかりが盛り上がっているわけではない。
「いつもそこの銭湯でひとっ風呂浴びてから来ているんだよ。湯上がりに、ここで飲むのが最高でね。実は、俺が通うきっかけは、店の前を通ったときに『そこの兄さん、一緒に飲まないかい』と、お客さんから声をかけられたことなんだよね」(会社員、50代)
このように、店の前を歩く通りすがりの人に、「一緒に飲もうよ」と客が声をかけると、「じゃ、一杯」と店に入ってくることもよくあるそうだ。
「ケーカマ(京急蒲田)は愉快な飲兵衛が多いからね、すぐに親しくなっちゃう」(会社員、30歳)
客たちは、「ここは常連と一見の境目がない店だよ」(自営業、40代)、「『いいよ、いいよ、入って来なよ、飲もうよ』ってみんな言うんだよ」(会社員、50代)と口々に語る。
誰でもウェルカムなのが、この店の魅力のひとつだ。
常連客も初めての人も、いつでもウェルカムな店だ
「誰が来ても店主は話の穂をついで仲良くやろうと気遣う。その優しさと思いやりがある姿をいつもみんな見てるからね、自然とこの雰囲気ができちゃったんだよな」と通い歴15年の常連。
そんな会話を耳にした店主はすかさず、「何言ってんだよ、ぼくちゃんはいつだって、その場の思いつきをあっちでもこっちでも、いい顔してペラペラ喋っているってわけ!」と照れ笑い。
「んなこたぁいいや、今宵も乾杯だな!」の声に、笑顔が弾ける客らの手には焼酎ハイボール。
気の置けぬ仲間たちと飲む焼酎ハイボールの味は格別だ
「夏の夜にはスッキリ切れ味がいいこれが一番だね」(40代)
■阪口酒店
【住所】東京都大田区南蒲田1-6-14
【電話】03-3731-4946
【営業時間】角打ちは平日17~22時 日曜定休
焼酎ハイボール300円、ビール大びん700円、カマシ焼き600円、焼きそば300円、たこ焼き400円