スポーツ

【有田工が甲子園初戦】 佐賀県勢が日本一に輝いた歴史的な「2本の満塁ホームラン」 九州他県からは「まさか佐賀に先を越されるとは」

広陵4-5佐賀北(2007年):広陵のバッテリーは現広島の野村祐輔と現巨人の小林誠司だった

広陵4-5佐賀北(2007年):佐賀北の3番・副島のホームラン。広陵のバッテリーは現広島の野村祐輔と現巨人の小林誠司だった

 甲子園球場が100周年を迎えたこの夏、第106回全国高等学校野球選手権大会の開幕試合で滋賀学園(滋賀)と戦うのが有田工(佐賀)だ。佐賀県勢といえば、がばい旋風に乗って決勝に進出し、深紅の優勝旗を手にした2007年の佐賀北が記憶にまだ鮮明だろう。伝統校・広陵(広島)に4点をリードされた8回裏に、3番・副島浩史の逆転満塁本塁打が飛び出したシーンは、高校野球史に残る大逆転劇であり、ジャイアントキリングだった。

 佐賀北は、夏の全国制覇を遂げた最後の公立校である。しかし、その13年前の1994年にも、全国制覇を遂げた佐賀の公立校があった。田中公士氏が率いて、葉隠れ野球と呼ばれた佐賀商だ。田中氏宅を訪ねると、地元の新聞社が発行した当時のグラフ誌を広げながら、83歳になる田中氏はあの夏を思い返していた。

「本当に奇跡的な出来事でした。うちとしては、ひとつ勝てれば良いという気持ちで甲子園に乗り込みました。佐賀県勢は1回戦で負けることが多くてね。一勝さえできれば、県民のみなさまにも喜んでいただけるだろう、と。全国制覇? もちろん、考えてもいませんよ」

 川上哲治を生んだ熊本をはじめ、野球が盛んな九州にあって、佐賀は他県の後塵を拝していた。秋と春の九州大会で、佐賀県勢との対戦が決まると、思わず喜ぶ他県の野球関係者の姿を田中氏は幾度も目撃していたという。しかし、熊本や鹿児島、宮崎などに先んじて夏の全国制覇を遂げた。

「優勝のあと、佐賀県高野連の理事長として九州大会に行くと、『まさか佐賀県に先を越されるとは思っていなかった』と言われたものです(笑)」

 1回戦で浜松工(静岡)を下して当初の目標を達成すると、岡山・関西、沖縄・那覇商を下し、準々決勝では北海道の北海を撃破。佐賀県勢がベスト4に残ったのも、実に32年ぶりのこと。さらに長野の佐久(現・佐久長聖)にも勝って決勝に進出した。

「勝ち上がるにつれ、選手たちが自信をつけていった。試合のない日に、練習会場で名門校や伝統校と一緒となると、私は佐賀商の選手と一緒に練習を見学していたんです。すると、うちの選手が言うんですよ。『田中先生、うちとそんなに(力が)変わらん』って。勝つことによって、成長していく。甲子園とはそんな場所ですね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
バチカンのモンテリーズィ枢機卿(左)にインタビューしたさかもと未明さん
【拉致問題解決への祈りは続く】さかもと未明さんが振り返る「横田夫妻との交流」と「バチカン枢機卿からの言葉」
NEWSポストセブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
結婚を発表したマイファス・Hiroと山本舞香(Instagramより)
《マイファスHiroと山本舞香ゴールイン》2人が語った結婚の決め手と夫婦像「作ったご飯を笑えるほどたくさん食べてくれる」 結婚記念日は新妻のバースデー
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
Snow Manの渡辺翔太と向井康二
《Snow Man渡辺翔太&向井康二》“なべこじコンビ”のサウナ帰り姿をキャッチ 肩を組んだり輪になって話したり“素”の時間を満喫 
女性セブン
9月末に給料が未払いとなり、職員が一斉退職するという事態になった足立区の住宅型有料老人ホーム。千葉県内などにもある関連施設でも同じような”未払い”が発生しているという
《見捨てられた老人ホーム》東京・足立区で「人手が回らず餓死者が…」「お風呂も入れられない」給与未払いに社長は雲隠れ…元職員が明かした“現場丸投げ運営”の実態
NEWSポストセブン
田村家のお正月の風景。左・田村正和さん、右・田村亮さん
《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
NEWSポストセブン