“老い”はそのまま受け入れているという
しかし、髪の毛では落ち込みませんでしたが、68歳のときの慢性硬膜下血腫で舞台を途中降板したときは落ち込みました。あれが役者として一番つらい出来事でした。その頃からセリフが入りづらくなって、これも辛いことでしたねぇ。以前は台本を3回読めばだいたい頭に入ったのに……。
だから、同じくらいの年齢の役者がセリフをどんどん覚えて蕩々としゃべっているのを見ると、ジェラシーを感じてね。ストレスに感じて、一時はテレビドラマをあまり見ることができませんでした。このストレスこそ、頭が薄くなる原因ですよ。
こういう“老い”は乗り越えていません。でも、どんなに賢い人もみんな老いは迎えるのです。人によって差はありますけどね。僕の師匠の俳優・島田正吾は97歳で新橋演舞場に1人で3時間立ちましたけど、そういう人はそうそういない。特別なんです。だから、私はそのまま受け入れる。そして、笑って過ごすんです。