「古い自民党文化が勝敗を決めた形」と伊藤氏(時事通信フォト)

「古い自民党文化が勝敗を決めた形」と政治アナリストの伊藤氏(時事通信フォト)

「進次郎総理なら選挙に勝てる、ポストもある」党内に巻き起こった“神輿は軽くて進次郎”論

 担ぎ出された小泉氏自身は当惑していたかというとそうではない。8月のラジオ番組では、「歩みを進めるも引くも自分で考えて自分で決める」と意欲をにじませ、9月6日に「首相になって時代の変化に取り残された日本の政治を変えたい」と出馬表明すると、序盤の世論調査でトップに躍り出た。

「これまで憲政史上最も若かった総理は伊藤博文の44才。いま43才の小泉さんがこの記録を塗り替えるには、今回の総裁選で勝利することが絶対条件。出馬の意向を示して以降、マスコミはこぞって“総裁本命”と持ち上げ、“進次郎内閣の顔ぶれ”を予想するなど、小泉さんで決まりという雰囲気になった。本人もその気になっていた面もあると思います」(別の全国紙政治部記者)

 政界のプリンスに大きな期待を寄せたのは私たち世論はもちろん、自民党の若手議員、中堅・ベテラン議員も人気のある小泉氏の出馬を歓迎した。宮崎さんが言う。

「進次郎氏の首相としての能力に不安があることは自民党議員の多くがわかっていたが、選挙に弱い若手議員は国民に人気のある進次郎氏が総理になった方が自分の選挙に有利だと考えた。中堅・ベテラン議員にはそれに加えて、経験の浅い進次郎氏であれば、総理になった後も自分たちが操りやすいという計算もあった。自民党には『神輿は軽くてパーがいい』という言葉がありますが、今回は、『神輿は軽くて進次郎』とはっきり言う議員もいました」

 総裁選が始まると、出馬を断念した野田聖子元総務相(64才)や、齋藤健経産相(65才)らが次々と小泉氏を応援すると表明し、一気に小泉優勢の流れができるかに見えた。

「野田氏はかつての郵政選挙で進次郎氏の父・純一郎氏から刺客を立てられ、自民党離党に追い込まれた遺恨があるはずですが、“勝ち馬に乗る”ために息子の進次郎氏を支持した。齋藤氏は進次郎氏と当選同期ながら、すでに農水、法務、経産の3回も大臣を経験し、実務能力が高い。心の中では自分の方が進次郎氏より有能だという自覚はあるはずです。それでも将来のポストが有利になると勝ち馬に乗ったのでしょう」(宮崎さん)

 自民党議員たちは、小泉氏の首相としての能力不足を百も承知で、「選挙の顔」に賭け総理への道を開いたのだ。

 いざ選挙戦が始まると、9人の総裁候補たちは全員、総選挙を意識して国民に聞こえがいい公約を掲げた。石破氏は「物価を上回る賃金上昇の実現」、高市氏は「経済成長をどこまでも追い求める」、小泉氏は「低所得者や中小企業支援」、加藤勝信元官房長官(68才)は「所得倍増」、茂木敏充幹事長(68才)は「増税ゼロ」など、まさに美辞麗句が飛び交う舌戦に。

「増税ゼロ」で「物価を上回る賃上げ」が行われ、「所得倍増」になり、そのうえ「低所得者や中小企業支援」まで行われれば国民にとってこんないいことはないが、実現不可能だと誰しもがわかる。選挙権を持つ国民全員が投票できるわけではないという総裁選の仕組みがあるからこその聞こえがいい言葉が並べば並ぶほど、その重みは失われていく。

後編へ続く)

※女性セブン2024年10月17日号

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