選挙戦中盤から大きな存在感を示した高市氏。一方で、党員に「政策をまとめたリーフレット」を郵送したことが、選挙管理委員会のルールに違反すると指摘されていた(時事通信フォト)
「史上最年少総理」「初の女性総理」自民党に“新しい風”が吹いたはずだった
勝利すれば憲政史上最年少総理と注目された小泉進次郎元環境相(43才)や、5度目の挑戦で「最後の戦い」と明言した石破氏に加え、若きホープとして小林鷹之前経済安全保障担当相(49才)が存在を示し、初の女性総理候補として高市早苗経済安全保障担当相(63才)、上川陽子外相(71才)の2名が出馬するなど、“派閥というしがらみがない”がゆえの、新しい総裁選かと期待を込めた国民は少なくない。だが、最後の最後でしゃしゃり出てきたのは派閥の“ボス”たちだった。
全国紙政治部記者が総裁選の裏で繰り広げられた駆け引きをこう語る。
「2週間に及ぶ選挙戦を経て、投開票の行方は石破氏、高市氏、小泉氏の有力候補3人のうち、どの2人が決選投票に残るかで結果が変わる混戦となりました。投票日の前日に動いたのは麻生太郎元首相でした。自らと距離のある石破対小泉の決戦になるのを防ぐため、麻生派の議員に高市氏への投票を指示。それが功を奏し、1回目の投票から高市氏に麻生派の票が上乗せされて、高市氏は1位で決選投票に進んだ。
すると、麻生氏に対抗する岸田文雄前首相が『高市とは考え方が相容れない』と、旧岸田派メンバーに決選投票になれば石破氏に入れるように呼びかけ、石破氏の逆転につながったのです」
なんのことはない、蓋を開ければ自民党の派閥政治は終わっていなかったというわけだ。
「割を食ったのは麻生派の河野太郎氏(61才)でしょう。前回総裁選は2位と健闘したのに、今回は派閥の親分である麻生氏から頼みの麻生派の票を引きはがされ、1回目の投票で8位と惨敗してしまったのですから。派閥の意向に翻弄されたわけです」(前出・全国紙政治部記者)
そもそも極端な発言で物議を醸す高市氏だが、麻生氏が支持を表明する前から強く新しいリーダー像を期待され、“総理本命”に急浮上していたのだ。しかし、“派閥の論理”で期待は泡に消えた。それ以上に、総裁選でいちばんの“道化役”を演じさせられたのは小泉氏だろう。
「史上最年少総理の誕生か」とマスコミの脚光をあび続けたにもかかわらず、決選投票には残れず3位に終わった。元時事通信社政治部長で政治ジャーナリストの泉宏さんは、今回の総裁選は小泉氏を「選挙の顔」として担ぎ上げようとした自民党議員たちの思惑を軸に展開されたとみている。
「進次郎氏は少なくとも通常国会(6月23日会期末)までは出馬をまったく考えていなかったと思います。国会が終わって、菅義偉元首相が進次郎氏を総裁選に担ぎ出そうと動き出す。そこから流れが始まった」