秘匿性が高いアプリ「テレグラム」「シグナル」は闇バイトで指示役が連絡用に指定してくることが多い(Sipa USA/時事通信フォト)
今回逮捕された容疑者のうちの一人も「報酬を受け取りに行ったら強盗をするよう指示された」と供述しているように、最近は「闇バイト」ではなく、偽装した「ホワイト案件」をSNS上でちらつかせて、人集めをするという。
「どうしても金に詰まっていた。犯罪じゃないホワイト案件なら、金だけ稼げるんじゃないかと安易に連絡を取ってしまいました」
筆者の取材にこう答えるのは、かつて特殊詐欺事件に受け子として加担し、検挙された経験のある男性(30代)。有罪判決を受け刑務所にも入ったが、コロナ禍真っただ中に”シャバ”へ復帰したところで仕事はなく、思いつめた末に「ホワイト案件」を募集していたSNSのアカウントに連絡を取ったという。ところが、応募元と接触すると愕然とさせられた。
「犯罪ではないホワイト案件だが、内容を伝えるのは身元確認が終わってからといわれ、テレグラム(匿名性の高い通信アプリ)で免許証や顔写真を送りました。住所を伝えるとすぐ”トヨタの白い車が止まっているね”と確認され、自宅近くまで来ているのかとびっくりしていたら”ホワイトじゃなくてタタキ(強盗)できる?”と聞かれました。ああ……俺は引っかかってしまったんだと気が付きました」(男性)
相手はおそらく、男性の住所などを聞き出してすぐに、ネットの地図サイトなどを使って、男性の自宅が現存するのかを確認したのだろう。この行為だけでも、男性に「お前の家を把握している」、あるいは「お前が逃げたら家族も危ない」といったプレッシャーをかけられる。男性を逃げられないようにした上で、ホワイト案件ではない犯罪行為をやらざるを得なくなる状態に追い込む。男性が助かったのは、出来事のすべてを警察に話したからだった。
「もう捕まりたくないし、まっとうに働きたいと強く思い、警察に相談しました。詐欺の指示役から返し(復讐)があるかもしれないとかいろんな不安がよぎりましたが、私の場合は当時の自宅も賃貸で、行政などの支援もお借りしてすぐに引っ越して、難を逃れました。少しの気の迷いにつけ込まれて、脅されれば本当に思考がストップしてしまう。警察など、誰かに相談するべきです」(男性)
最初の仕事は、受け取った荷物を郵送するだけだった
千葉県在住の主婦(50代)も、10代の息子が「ホワイト案件」に騙され、犯罪に巻き込まれてしまったと嘆く。