タンクトップ姿で車に乗る欧陽娜娜(オーヤン・ナナ)(Instagramより)
「中国を愛しています」
この過激とも言える世論はさらに拡大。法曹界からも賛同が寄せられる事態となった。台湾の法律学者、沈伯洋はネットメディア『三立新聞網』が10月17日に配信した記事の中で、「中国の軍事演習に賛同することは国連総会で採択された自由権規約第二十条にある『戦争のためのいかなる宣伝も法律で禁止する』に違反する行為であり、また台湾の刑法で2年以下の懲役刑と対象となる『犯罪行為を扇動する行為の禁止』にも抵触する可能性があると指摘。中国が推し進める武力統一への賛同行為を『外患罪』の対象とすべきと主張している。
しかし、なぜナナは、同胞から反発を招く“親中発言”を繰り返したのか。前出の芸能記者が事情を明かす。
「彼女だけでなく、中華圏で活動する芸能人にとって中国市場は非常に重要。台湾と比べ人口で60倍、経済で25倍の中国は、絶対に失いたくないマーケットなんです。ただ、台湾人という肩書きがある限り、中国世論から反感を買えば、すぐに封殺される危険性がある。そうならないためには、政治的なスタンスも中立を保ったり曖昧にしたりするのでは不十分で、親中ぶりをアピールする必要があるのです。特にナナさんは中国のネット配信ドラマや映画に主演として引っ張りダコで、まだ20才そこそこで年収は少なく見積もっても10億円は下らない。政治的発言をしてでも、中国マーケットでの存在感をキープしたいのでしょう」
殺人教唆の罪にこそ問われていないが、日本でもその名が知られる台湾出身女優の林志玲(リン・チーリン)も、昨年10月にウェイボーで投稿した中国建国74周年を祝うメッセージや、『中国を愛しています』という中国メディアの投稿をリポストしていたことが掘り返され、批判を浴びているという。
ただ、前出の芸能記者は、台湾のネット上の「親中タレント狩り」に不気味さも感じているという。
「台湾には言論の自由が保障されているはず。意に沿わなければ抹殺してしまえという風潮に違和感を覚えている人もいます。さすがに“殺人教唆”まで持ち出すのは、やりすぎと言えるのではないでしょうか」(前出・芸能記者)
著名人の政治的発言はリスクがつきまとうが、ナナ本人も「まさかここまでとは……」と思っているのかもしれない。
取材・文/奥窪優木