打ち上げの中継を見届けるアイスペース社・CEOの袴田武史さん、宇宙飛行士の山崎直子さん、アイスペース社・事業開発部門シニアマネージャーの浦田真幸さん(奥から順に)。撮影/山口京和
ロケットの燃料に月の水を活用
袴田さんは言う。
「我々の目標は、人類が宇宙に生活圏を築けるようにしていくことです。そのためには月の資源を活用し、経済圏を構築する必要があります。まずは月に存在する水を水素と酸素に分解し、それをロケット燃料として利用することなどを通して、宇宙開発のコストを削減していく。多くの人々を巻き込む『渦』を作っていきたいと思っています」
打ち上げの日、日本の会場には、ゲストとして宇宙飛行士の山崎直子さんも参加していた。今回の月探査の挑戦について、山崎さんはこう話した。
「私たちの生活圏や経済圏は、現在、地球上だけで完結しています。それを月や宇宙にまで広げようとするうえで、不可欠なのが民間の力です。
また、こうした挑戦は単に技術や経済の話だけではなく、私たちが『地球上だけの生き物』であり続けるのか、それとも『宇宙にまで広がる生き物』になるのかという分岐点にもなっていくと言えるでしょう」
その日、ファルコン9に格納されたランダーは、日本時間の16時44分に切り離された。月までの距離は38万キロ。着陸まで4~5か月に及ぶ長い旅が始まった。
取材・文/稲泉連
※週刊ポスト2025年2月7日号