ライフ
鈴木俊貴×川上弘美 「鳥も『言葉』を話している」

【対談】『僕には鳥の言葉がわかる』著者・鈴木俊貴氏と自らの小説に“鳥の言葉”を登場させた川上弘美氏が語り合う「動物言語が切り拓く未来の可能性」

動物言語学者・鈴木俊貴氏(左)と小説家の川上弘美氏が動物言語について語り合う

動物言語学者・鈴木俊貴氏(左)と小説家の川上弘美氏が動物言語について語り合う

「鳥も『言葉』を話している」──。そんな世界的な大発見をした動物言語学者・鈴木俊貴氏(41)の科学エッセイ『僕には鳥の言葉がわかる』。鈴木氏に早くから注目し、自らの小説にも鳥の言葉を登場させた小説家の川上弘美氏(66)と鈴木氏が、動物言語が切り拓く未来の可能性について語り合う。【前後編の前編】

シジュウカラにも「言葉」がある

川上:鈴木さんの研究をはじめて知ったのはテレビ番組からだったのですが、びっくりしました。小鳥にも人間のような「言葉」があるなんて。

鈴木:はい、僕はシジュウカラの言語を研究しているのですが、彼らの鳴き声は単に感情を表現しているのではなく、ちゃんと「意味」を持っていたり文法があったりと、言葉であることを科学的に証明したんです。一般の人はもちろん、研究者も「言語を持っているのは人間だけ」と思い込んでいましたから、僕の発見は大きなインパクトがあったようです。

川上:本当に。たとえば、ご著書には「ジャージャー」という鳴き声がヘビを意味していると書かれていますね。

鈴木:そうなんです。シジュウカラは天敵であるヘビに対して「ジャージャー」と鳴くのですが、僕はそれが単なる警戒の鳴き声ではなく、「ヘビだぞ」という意味を持っていることを確かめました。シジュウカラは「ジャージャー」という声を聴くと、頭の中でヘビをイメージしているんです。

川上:ご著書に詳しく書いてありますが、森の中でそれを確かめた手法がまた面白い。鈴木さんは研究者ですから、科学的に証明しないといけないのですよね。

鈴木:そうなんです。主張を実験で裏付けして、英語で論文を書きます。同じように、シジュウカラの鳴き声には文法があることや、ジェスチャーを使ってコミュニケーションをしていることも発見しました。つまり、言葉は人間だけのものではなかったんです。

川上:私も近所のカラスなどを観察するのが好きなのですが(笑)、鳥っていかにも喋っていそうですよね。だから、これまで鳥の言葉が研究されてこなかったのも意外でした。

鈴木:研究者も、どうしても「人間中心主義」に陥ってしまうんです。でも、川上さんは人間以外の動物もよく見てらっしゃいますよね。小説によく動物が出てきますし、僕の研究も登場させてくれました(「ピーツピ ジジジジ」『明日、晴れますように』朝日新聞出版所収)。昔から動物はお好きだったんですか?

川上:父が生物学者である影響もあるのか、小さい頃から『ファーブル昆虫記』などはよく読んでいましたね。大学も生物学科でしたし、生物の教員をしていたこともあります。

関連記事

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト