スネル(時事通信フォト)
打撃への影響は?
実戦での投球機会が確保しにくいなか、「チーム上層部は定期的な投球練習を続ければ、先発復帰できると踏んでいるようだ」(同前)とされる。
その投球練習での仕上がりだが、冒頭のブルペン練習では直球のほか、ツーシーム、スプリット、カットボールを試したものの、武器であるスライダーは「ヒジへの負担を考慮した医療的判断」(ロバーツ監督)から“解禁”されていない。
「2度目の手術からの復帰は投手生命にかかわるだけに、スライダーの解禁といった段階を踏むのは必須。ただ、6月に復帰予定のクレイトン・カーショウやエメット・シーアンといった先発陣が役割を果たせるかなどのチーム事情により、首脳陣が大谷投手復帰を急ぎたい考えに傾くことはありうる」(前出・スポーツ紙デスク)
二刀流復活のリスクという点では、故障の再発のみならず、「打撃への影響」を危ぶむ声もある。前出・友成氏が言う。
「大谷といえども、負担の大きい二刀流でシーズンを通して投打ともに全開とはなかなかいかない。本塁打46本でシーズンMVPとシルバースラッガー賞を受賞した2021年は、最終盤は投手としての出場をなくして9勝。翌2022年は15勝9敗、防御率2.33と投手でブレイクしたが、打者としては打率・273、本塁打34本で終わりました。
ドジャースに移籍した昨年は打者に専念して54本塁打、130打点で二冠に輝き、前人未到の50-50を達成。DHとして初のMVPを受賞しました。二刀流を再開したら昨季のようなシーズン後半の本塁打ラッシュは難しいでしょう」
今シーズン、これまで着実に本塁打数を重ねているが、実はメジャーで長打力のバロメーターとされる「打球速度」は20位台と伸び悩んでいる(5月4日時点)。トップ5をキープした過去3シーズンとは対照的だ。
「とはいえ、6月にホームランを量産する“6月男”の大谷ですから、例年通りに調子を上向かせて打者に専念すれば、7月の前半戦終了までに30本に届くでしょう。二刀流の前倒しがないほうが、打撃成績が残せるのではないでしょうか」(同前)
容易ではない早期の二刀流復活。多くの課題を乗り越えられるのか。元ロッテ投手でメジャー挑戦経験がある野球評論家の前田幸長氏はこう言う。
「二刀流は大谷自身が一番望んでいる姿で、本人の投打へのモチベーションも上がる。球数制限をしながら徐々にペースを上げていけば、負担は軽減できる。球団の投手不足などに左右されずに自分のペースで復活してほしい。そうすれば、二刀流でのポストシーズンでの活躍も十分期待できるでしょう」
二刀流でワールドシリーズ連覇──それが現実となる日を待ちたい。
※週刊ポスト2025年5月23日号