フェアリージャパンの競技団体・日本体操協会の健全化が望まれる(GettyImages)
「調査を続行せず」から「本格的な調査開始を保留」に“修正”
そんな村田氏の続投を決めた日本体操協会の副会長(新体操の国内トップ)、橋爪みすず氏の言動も変節している。3月の説明会で、「我々任命した側の体操協会としての責任があると私は考えております」「責任の所在はどこにあるのかということを明確にした上で(筆者註・今後の)体制を決めていきたい」と発言している。
しかし、5月17日に村田氏の続投を含む新体制の発表で、橋爪氏の責任は一行も書かれていなかった。
日本体操協会そのものの言動も二転三転している。筆者の質問に対する15日付の回答は、前述の通り、「当事者(選手)の意向に反した調査を続行することは妥当でないものと判断しました」と調査の放棄を表明している。
それが、3日後の18日に選手の所属クラブに送った文書では、「本格的な調査開始を保留とした」と、表現をかなり変えているのだ。
「妥当でない」として実施する気がなかった第三者による「本格的な調査」について、たった3日で、やる気はあるが「保留」しているだけのように表現を転じたのはなぜか。理由を問うと、協会は「本件につきましては、回答を差し控えさせていただきます。本協会からの発表はホームページにてさせていただきます」とした。
事実解明を避けた弥縫策では、強化体制の再構築には程遠いだろう。
■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。2024年刊の『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)が科学ジャーナリスト賞2025優秀賞を受賞、大宅壮一ノンフィクション賞最終候補作に。