日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操日本代表の選手4人が、村田由香里・強化本部長(43)のパワハラ指導などを理由に代表合宿所から姿を消した――そんな衝撃的な「ボイコット事件」がノンフィクション作家・広野真嗣氏の取材により明らかになった。村田氏と日本体操協会による発言や説明の経過を辿ると、「二転三転」する様子が見て取れる。広野氏が続報する。
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新体操日本代表チーム(フェアリージャパンPOLA)での村田由香里・強化本部長によるパワハラ問題を本誌・週刊ポスト5月19日発売号で独自取材により報じた。日本体操協会は村田氏を「続投」させて解決を先送りしているが、報道を受けてスポーツ庁の室伏広治長官が「第三者を入れて事実関係を確認してもらいたい」と言及する事態となった。
村田氏とはどんな人物か。関係者が口を揃えるのは「言うことがコロコロ変わる」という点だ。
発端は2月26日早朝、4人のレギュラー選手が東京・北区の国立スポーツ科学センター(JISS)から出ていくという、ボイコット行動を起こしたことだ。4人が苦衷を訴えた原因が、村田氏によるパワハラ指導だった。
経過をより詳細に辿ると、村田氏の“個性”が浮き彫りになる。
4人の動機がよく分かっていなかった同日午前、残された5人の補欠選手に対して村田氏は「あなたたちにできたことがあったはず。今後どうするか、話し合って」という趣旨の発言で責め立てた(3月12日の所属クラブや保護者向け説明会の音源データより)。
ところが4人が戻り、原因が村田氏自身だと確定すると態度を変えた、と競技関係者が補う。
「村田さんは、“あなたたちのせいみたいに受け止められたなら申し訳ないけど”と、言い逃れをしたそうです。責任を押し付けては言を翻す。振り回される選手たちが気の毒です」
翌2月27日、村田氏は選手の所属クラブに自らの非を認める謝罪メールを送り、3月12日の説明会でも頭を下げた。
だが4月6日、もう一つの指導先・日体大新体操部の保護者会では「大きくパワハラとかはなかった」と問題がなかったかのように報告。説明会での低姿勢は消えていた。
パワハラがあったかどうかについて日本体操協会に、筆者が第三者に調査を委ねるべきではないかと問うと、5月15日付で「当事者から調査の続行を望まない旨の意思が表示されたことから(中略)当事者(選手)の意に反した調査を続行することは妥当でないものと判断しました」と回答があった。つまりパワハラ認定を放棄したわけで、村田氏の「パワハラはなかった」発言は根拠がない。