大相撲観戦を楽しみにする訪日客は多い
「意識が高い人」と観戦すれば大相撲をさらに深く楽しめる?
取り組みと取り組みのあいだに、大相撲の仕組みについても説明しました。そのたびに「番付が上の人に逆らえないというのは完全なパワハラだ。時代錯誤だ」とか「引退した力士を『年寄り』と呼ぶのは差別的だ」などと、自分では鋭い突っ込みのつもりだけどピントがずれた独善的なイチャモンを付けてきます。
髪型が決められていることも、「ごっつぁんです」など独特の言葉遣いを強いられることも、彼女には「とにかく何らかのハラスメント」にしか見えません。力士に女性がひとりもいないのは言うまでもなく言語道断ということで、「今すぐクォーター制を導入して、勝ち星に関係なく、幕内の一定数を女性にすべきだ」と力説し始めました。
そんな彼女が、大相撲に関してひとつだけ高く評価したのが、太った体型の人に活躍の場を与えているという点。「ルッキズムにとらわれずにチャンスが平等に与えられているのは素晴らしい」と称賛しています。的外れな上にむしろ失礼に聞こえるのは、こっちの意識が低いからでしょうか。
そんなことをさんざん言い散らかして、彼女は母国に帰っていきました。「大相撲がいかに非人道的かを論文にまとめて発表したい」と張り切っています。もし発表されても、おそらく大相撲には何のダメージもないでしょう。いっぽうで「意識の高さ」という甘い蜜やSDGsといった聞こえのいいお題目が、いかに人間の愚かさを引き出すかを知らしめる効果はあるかもしれません。
といった具合に、「意識が高い人」が言いそうなことを想像するだけでも、十分に勉強になりました。なんてありがたいのでしょう。目先の「正しさ」を振り回す人のウサン臭さを再認識することができたし、大相撲という独自の文化がさらに好きになりました。
残りわずかとなった夏場所、大の里は優勝して横綱への切符を手にできるのか。あるいは、大どんでん返しが起こるのか。よかったら、隣で「意識が高い外国の人」がブツブツ言っている状況をイメージしつつ観戦して、さらに深く楽しんでください。