ライフ

もしも「意識が高い外国の人」が隣で大相撲を観戦していたら

(時事通信フォト)

大相撲の文化は独特に映るのかもしれない(時事通信フォト)

 訪日外国人の増加はもはや日常風景だが、文化の差異がもたらす問題について想像しておくことは重要である。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 大相撲夏場所が盛り上がっています。22日現在、横綱昇進を狙う大関の大の里が12連勝で独走。あと3日残っていますが、二場所連続4度目の優勝と横綱昇進は、ほぼ確実と言ってもいいでしょう。伯桜鵬や安青錦といった期待の若手も、大いに暴れまくりました。

 日本に生まれ育った私たちにとって、ちょんまげを結った大きな体の男性がふんどし姿で戦う光景は、すっかりおなじみです。土俵上での鍛え上げた力と技のぶつかり合いに、手に汗握ったり感動したりしてきました。

 それはそれとして、日本政府観光局の発表によると、日本を訪れる外国人はどんどん増え続けています。2015年は1~3月の合計で1000万人を突破。4月も約390万人で、単月として過去最高を更新しました。今後もさらに増加し続けることでしょう。

 テレビの前で大の里に声援を送りながら、ふと「もしも意識は高いけど少しアレな外国の人が大相撲を観戦したら、いろいろ言いそうだな」という思いが頭をよぎりました。違う文化や違う考えを持つ人たちとの交流がますます深まる中、日本の伝統文化の素晴らしさを見直しつつ、グローバルな視点を持つことも大切です。

なぜ彼らは乳首丸出しであられもないポーズを取っているのか?

 ひと皮むけた国際人になるべく、意識が高い外国人の友だちと国技館に行ったというシチュエーションを想像してみました。その友だちは相撲観戦は初めてです。力士の出で立ちを見てより強い衝撃を受けそうということで、女性という設定にさせてください。

 彼女がまず驚いたのが、成人男性が乳首丸出しで「土俵」と呼ばれる舞台に上がって、足を交互に上げたり四つん這いになったりなどのあられもないポーズを取っていること。それを見て「なぜ、あんな恥ずかしいことをさせるのか」と疑問をぶつけてきました。

「いや、あれは四股や立ち合いといって、いわば一種の様式美なのだ」と説明しても、「もし私の息子が同じことをさせられたら耐えられない。しかもテレビ中継までされて」と憤慨しています。「彼らは、むしろ好んでやっている」と言っても、「いや違う。見えない権力勾配が働いていて、そう思い込まされているだけだ」と納得しようとしません。

 次々と取り組みが行なわれていきます。「必然性がないのに激しい戦いを強いられ、それを見せものにされるなんて、人権無視も甚だしい。なんて野蛮なんだ」と言い出しました。「スポーツなんだから、それを言っちゃあ……」となだめても、自分が思いついた「正しい理屈」に酔っている彼女の耳には届きません。

 やがて「彼らがまいているあの白い粒状のものは何だ?」と聞いてきました。反応を何となく予想しながら「塩だ」と答えると、案の定「信じられない!」と頭を抱えます。「まったくSDGsじゃない! 塩という大事な食べ物を意味もなく大量にばらまくなんて! 地球上には塩が手に入らなくて命を落とす人だっているのに」と怒っています。

「そうかもしれないけど、ああやって土俵を清めてるんだよ」と意義を説きましたが、聞こうとはしません。「モッタイナイ、モッタイナイ」と呪文のように唱えながら、自分の意識の高さに酔いしれるばかり。SDGsを信奉する意識の高さと違う文化を理解する気がない傲慢さは、どうやら両立するようです。

関連記事

トピックス

ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
ラブホテルから出てくる小川晶・市長(左)とX氏
【前橋市・小川晶市長に問われる“市長の資質”】「高級外車のドアを既婚部下に開けさせ、後部座席に乗り込みラブホへ」証拠動画で浮かび上がった“釈明会見の矛盾”
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン