大谷翔平の新投球スタイルを分析(Getty Images)
二刀流復活、ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平のピッチングはこれまでと何が変わったのか? 専門家たちが分析・考察する──。
投手復帰後の大谷翔平は、走者がいない場面で、左脚を後ろに引くノーワインドアップを披露している。セットポジションで投げていたエンゼルス時代からの変化を、ダルビッシュ有や田中将大を育てた名伯楽として知られる野球評論家・佐藤義則氏が分析する。
「ノーワインドアップで投げるのはバランス的なものでしょう。反動が生まれ、前に出る力がついてスピードも出る。投手としてリラックスできて良い」
復帰登板の最速は161キロ。球団が想定していた球速を大きく上回った。
「チームも勝たないといけないし、アドレナリンも出る。靭帯再建手術を2度経験して慎重を期しているのだろうが、球速は想定内でしょう。今後は張りや疲れを思い出しながら球数とイニングを増やしていくことになる」(佐藤氏)
初登板で4球種28球、中5日での2回目でも4球種18球を投じた。スポーツジャーナリスト・広尾晃氏は、初登板で2023年の球種割合が6%だったシンカーを28球中8球も投げていたことに注目する。
「全球種を試している段階だろうが、シンカーボーラーへの移行を目指しているのでは。剛腕型の黒田博樹は渡米後、シンカーで打たせて取るスタイルに変え、長く現役生活を続けられた。
大谷のシンカーの特徴は直球と球速差がないこと。最近、MLBではピッチトンネルと呼ばれる、異なる球種を近い軌道から変化させ、打者の見極めを難しくする投球理論です。2回目にシンカーを投げなかったのは捕手が新人のラッシングになった影響でしょう。今回は彼のサイン通りに投げたようですが、今後はスイーパーを武器にしながら、シンカーを試していくことになるのではないか」
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2025年7月11日号