ボウガンが凶器に(写真はイメージ)
「野津家の一員を終わらせて精算したい」
被告は事件後、出頭することを予定していたが、伯母が近隣に助けを求めたことから110番通報を受けた警察が駆けつけ、自宅で現行犯逮捕された。
弁護側冒頭陳述によると、野津被告は家族や親族を殺害することで死刑になろうとしていたという。
「被告は幼い時から自閉スペクトラム症と診断され、厳しい家庭環境に育った。母親は境界知能で精神科に通院していた。弟にも注意欠陥多動性障害があり、母親はもっぱら弟にかまい、被告を放置したことから、被告は十分な愛情を受けずに育った」(弁護側冒頭陳述)
中学生の頃には被告は強迫性障害を発症し、さらに生きづらさを覚えたようだ。中学3年生になると、一人で祖母の家に身を寄せ、祖母と二人暮らしを始めた。この祖母宅が被告の事件当時の自宅であり、事件現場となる。
祖母宅に住んでからは精神的に安定した生活を送り、大学へと進学した被告だったが、母親が弟の暴力に耐えかねてシェルターに避難したことから、弟も祖母宅で生活するようになる。のちにシェルターを出た母親は祖母宅の近くに単身居住していた。
こうした暮らしのなかで「母親は被告を気にかけず、死にたいという気持ちが大きくなった。しかし、死ぬだけでは無理、原因は母親にある。野津家の一員を終わらせて精算したい。事件を起こした後、出頭し死刑になって自分の人生も終わらせたい。それがもっとも正しい選択」(弁護側冒頭陳述)として、被告は、伯母も加えた4人の殺害計画を立て、実行に移したという。
対する検察側は、被告が学費未納により大学を除籍になった一方で、専門学校に進んだ弟が就職を決めたこと、母親が経済的な援助を行なわず自身に関心を示さないことなどから、「将来の展望が持てず母親に不満を募らせ、自殺も考えたが、残された母親らは自殺を“被告のせい”だと説明するのではと考えた。家族の将来を奪うために殺害して、自分が苦悩を感じていたことを知らしめ、死刑判決を受けて死のう」と思い事件を起こしたと主張している。
被告の“死刑”への思いは強かったのか「身内を3人殺しても死刑にならないのではと思い、伯母も殺そうと思った」(検察側冒頭陳述)という。