1993年に初当選を果たし、支援者らと喜びに浸る高市氏(写真/共同通信社)
“シカ発言”との乖離「ぜんぜんわかってない」
「“シカが外国人に虐待されている”という物言いは、やや過剰といいますかズレていると認識しています。むしろシカに危害を加えられたというケースは、毎日のように見かけますけどね。今みたいに秋口だと、シカも発情期で特に気が立っていますから、不用意に近づいた観光客が襲われてケガしたり救急搬送なんて例もよくある。
そもそも奈良公園のシカは『野生』なんです。私たちみたいにシカと共生している市民以外にはこの認識がほとんどない。これは日本人も外国人もそう。身の危険を感じた観光客がシカを追い払うケースは多いと思うんですが、それをもし『外国人がいじめている』と言うのであれば、それはいろんな受け取り方をされますよ」
シカは繊細な生き物だ。女将曰く、近年では人間の匂いがついた子ジカが親から授乳を拒否され、餓死してしまうことなども問題になっているという。「シカとの距離が近すぎる人が多い」ことに問題はありそうだが、それは外国人だけに限ったものではないようだ。
さらにこう“苦言”も呈した。
「残念ながら私は、『高市さん、ぜんぜんわかってないな』と思いました。私の周りでも、そう言っている人は少なくない。そもそもあの方は市内生まれじゃないし、今だってほとんど東京にいらっしゃるでしょ。私たち奈良市民のように1000年以上もシカと生きてきた人ではないんです。きちんと中に入って、現実を知ってから物申してほしかったですね」
高市氏の“愛国心アピール”が空虚だと指摘した旅館の女将。さらに奈良公園のシカを守る活動を行っているボランティアを取りまとめる「鹿サポーターズクラブ」も、「外国人が虐待しているとは認識していない」と答えた。事務局の担当者が語る。
「最近では、“SNS映え”の影響もあってか、シカに不用意に近づく人が多い。たとえばシカせんべいを使ってお辞儀をさせたり、特定の背景が映るように誘導したりなどして、お腹いっぱいになったシカが怒ってしまうというケースは聞きます。たしかに、外国人観光客は増えていますが、これは外国人に限らずです。
期待していたお答えではないかもしれませんが、“虐待”という認識はありません。逆にシカに襲われる人は増えていますが……」
地元民から見れば、愛国心ゆえに“シカたない発言”ともいかないようだ。