水ダウで人気の高野とクロちゃん(高野のインスタグラムより)
「マセキの芸人」にただよう安心感
次に業界内の人気が高いのはなぜなのか。
高野さんの代名詞と言えばドッキリであり、怒りながらキレる姿であることは間違いないところ。そもそもブレイクのきっかけは、YouTubeチャンネルを「きしたかのなかよしチャンネル」から「高野さんを怒らせたい。」に変えたことでした。
高野さんは『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』の常連であるように、強めのドッキリもOK。絶叫マシンに乗せられたり、ダイエットさせられたり、無人島に送り込まれたりなどの体当たり系の企画をこなすタフさ、さらにその上で気持ちよく負けられる姿が起用をうながしています。
なかでも大きいのは、前述した「怒っているけど、実はいい人」というキャラクターが浸透して、「この人なら多少の無茶をしてもネット上で叩かれづらいだろう」という信頼感が得られたこと。つまり、高野さんだから仕掛けられる企画がたくさんあるということになります。
また、「ドッキリの仕事しか来ない」と揶揄する声もありますが、他の芸人と口ゲンカしながら笑いを取れるようになったことからトークバラエティの出演も増えています。ドッキリだけでも忙しかったのにそれ以外の番組出演も増えているのは、スタッフも「本当にいい人」という印象があるからではないでしょうか。本人から「営業妨害だ」とツッコミが入るかもしれませんが、かつて教師を目指して教員免許を取得した常識人としての背景も現場の安心感につながっているようです。
きしたかのの所属事務所はマセキ芸能社。ウッチャンナンチャンや出川哲朗さんを筆頭に、バカリズムさん、いとうあさこさん、ナイツ、狩野英孝さん、モグライダー、かが屋らを擁し、事務所全体に「いい人」「優しい人」というイメージがあります。
あるテレビマンから「マセキの芸人は吉本の芸人と相性がいい」と聞いたことがありました。巨大勢力を誇り、どんどん前に出て笑いを取りに行く吉本興業とは異なる、ほのぼのとした笑いのイメージも起用を後押ししているところもあるのでしょう。
期待される芸人妻との夫婦共演
最後に今後、高野さんはテレビの世界でどんな役割が求められそうなのか。
もちろんこれまで通り、ドッキリや体当たり系の企画、さらにトークバラエティなどのオファーは続くでしょう。
それに加えて期待されはじめているのが、浅井企画所属の芸人である妻・まるゆかさんとの夫婦共演。以前から業界内では「高野の奥さんもいい」「夫婦共演すればファンが増えるだろう」という声がありましたが、ここにきて一般層にもそれが伝わりはじめています。
最近で反響があったのは4日深夜放送の『オールスター後夜祭’25秋』(TBS系)。
まるゆかさんは急きょ高野さんがいる生放送のスタジオに駆けつけて「急いで来たんでノーパンで……」と笑いを誘い、“ミッドナイト嫁一輪車レース”に出場して優勝。高野さんと抱き合って熱いキスを連発したほか、番組エンディングではクイズ最下位に終わった宮下草薙・宮下兼史鷹さんに毒霧を吹きかけてオチをつけました。
まるゆかさんの常に笑顔ながらパワフルなキャラクターは好感度が高く、バラエティへの相性も上々。ネット上には「愛きょうがあってかわいい」「いい夫婦」などの好意的な声があがるなど、地上波のバラエティにおける夫婦芸人としての可能性を感じさせました。
さらに、まるゆかさんが『オールスター後夜祭』で結果を出したことで、同じ藤井健太郎さんが手がける『水ダウ』への単独出演もありそうですし、さまざまな形で高野夫妻がフィーチャーされる機会が増えていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。