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【新刊】“ホラーの衣装を着せられた本格探偵もの”雨穴氏による変人設計士・栗原の冒険譚『変な地図』など4冊

廃墟、妖怪図、トンネル人身事故。就活中の栗原青年が浴びる祖母と母の歴史

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 気温もどんどん下がり、いよいよ冬本番が近づきつつある。こんな季節には、温かな室内で読書を楽しんでみては? おすすめの新刊4冊を紹介する。

『変な地図』雨穴/双葉社/1760円

『変な家』などでオカルトや建築の知識を披露してきた変人設計士の栗原。彼の大学4年生時代の冒険譚だ。自死した測量士の祖母の傍らにあった古地図、それをR県と特定した建築工学准教授の亡母。因習深いその土地へ向かう栗原が現代の金田一耕助に見えてくる。ホラーの衣装を着せられた本格探偵もの。女達の忍従の歴史と共に栗原のトラウマが解錠されるのも読み所だ。

英訳で60万部突破のベストセラー。神保町という古書店街が育む人との絆

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『新装版 森崎書店の日々』八木沢里志/小学館/1705円

 本書の最初の単行本化は15年前。文庫を経てこの秋、新編を加えた新装版として再登場した。本は時に耐えるのだ。恋人の手酷い裏切りに心が半壊、会社も辞めてしまった20代半ばの「わたし」。神保町の古書店を継いだ叔父の誘いで二階に住み、店番もするうちに、読書に目覚め心が蘇生する。本が核にあるお話は国境を超えて読書人に愛される。このお話の愛らしさも普遍です。

老化の悲哀もボケとツッコミでやわらぐ。中年女子に効く笑いという活力剤

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『中年に飽きた夜は』益田ミリ/ミシマ社/1760円

 関西人は天性の漫才師だなあと改めて感嘆。50歳の一人暮らし会社員女子がファミレスでよく出くわす同年代女子二人組の会話を漏れ聞き、50歳あるあるを楽しむ。似合わなくなったTシャツ、売るほどあるポーチ、人の名前は思い出せず、もらう誕生日ケーキは「まるごとバナナ」。行きたい所も特になく、テンションが上がるのはカルディ。共感の笑いでお腹の皮までシワシワに!

無敵の当事者文学にして芥川賞受賞作。目も眩む世界の最重要文学賞の候補にも

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『ハンチバック』市川沙央/文春文庫/660円

 世界を呪詛するような活火山作。冒頭のえぐいエロ描写、この偽体験記事(コタツ記事)を書いているのが女性であること、彼女は重度障害者で、両親の遺した不動産で経済的には何不自由なく、肉体的には不自由きわまりない生活をしていることなどがテンポよく綴られていく。選考委員の島田雅彦氏は「健常者をムチ打つ悪態のカデンツァ」との賛を。この衝撃、一生ものです。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年12月4日号

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