国際情報

中国にいくらODAでカネ払っても日中関係改善に関係ナシ

 肥大化する一方の隣国に、日本はどう対処しようとしているのか。今後の日中関係を考える上で看過できないのが、丹羽宇一郎中国大使の言動だろう。最近では丹羽大使が外務省本省に対中ODAの強化を求めていたと報じられている。これまで日本の“媚中外交”を論じてきた古森義久氏が、丹羽外交を検証する。

 * * *
 丹羽大使が中国への日本のODA(政府開発援助)の強化を日本外務省に具申したという報道が流れた。昨年12月の同報道によると、丹羽大使は尖閣事件で悪化した日中関係を改善するために日本が中国に対し環境保護や法整備、労使紛争解決などの面でのODA重点供与をするべきだと進言したという。

 だが日本からのODAはいくら巨額が供与されても、日中関係の改善にはまったく役立たなかった。中国政府は日本からの援助の存在さえも国民一般には伝えなかった。
 
 ODAの額と日中関係の状態の間に因果関係がないことは、すでに立証済みなのである。しかも中国は外貨保有や貿易黒字の額では世界のトップ、経済大国としても世界第二なのだ。縮小と不況の日本がなぜ朝貢のように援助を与えねばならないのか。この報道が事実ならば、丹羽氏の認識を疑わざるをえない。

 丹羽大使は南京訪問では「日中両国の関係は夫婦以上だ」と語ったという。民主主義の自由の国の日本と、共産主義の抑圧の国の中国と、どこが「夫婦」なのか、しかも日本の尖閣という領土を理不尽に奪おうとする中国なのである。利害のぶつかりあうその両国を「夫婦」という情緒的な表現でくくろうとするこの日本大使の中国観は基本的な姿勢のゆがみを感じさせる。

※SAPIO2011年2月9日・16日号

関連キーワード

トピックス

連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
広島・広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《交通事故で骨折と顔の左側の歯が挫滅》重傷負ったタレントの大東めぐみ「レギュラーやCM失い仕事ほぼゼロに」後遺症で15年間運転できず
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト