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生活保護を批判する前に仕事のシェア十分にすべきと専門家

セーフティネットの最後の砦といわれる生活保護。だが、いま、重大な綻びが生じている。

生活保護に予算が圧迫され、受給者の増加に現場の職員の人数が追いつかないという問題ある。 元大阪市職員はこう語る。

「生活保護のケースワーカーは、国の基準ではひとりが80世帯を担当すると規定しているが、まったく人が足りない。私は最大で200人も担当した。申請の処理だけで手一杯で、他に手が回らないのが現状です」

そのためますます目が行き届かなくなり、不正受給が横行するという悪循環に陥っているわけだ。

しかし、若者の雇用に詳しいフリーライターの赤木智弘氏はこういう。

「働きたくても仕事が見つからなくて働けない人が増えているなかで、セーフティネットである生活保護を受ける人が増えるのは当然。不正受給者がいることが本質的な問題ではありません。仕事をしないことに批判があるならば、仕事を十分にシェアしろといいたい」

だが、一方では「生活保護は廃止すべし」との声が上がり始めているのも事実だ。社会保障の専門家である関西国際大学教授・道中隆氏は、「廃止を含めた見直しが必要」だと主張する。

「例えば住宅が必要な人には住宅に特化し、医療扶助が必要な人には医療に限ってケアしていく。雇用保険の整備、年金の整備、住宅手当の整備などをしていけば、包括的な生活保護制度に逃げ込む必要がなくなるはずです」

さらに漫画『「若者奴隷」時代』の著者・山野車輪氏もこんな提案をする。

「生活するための最低限の費用を全国民に配る“ベーシックインカム”という方法があります。例えば月5万円をすべての国民に配る。生活保護を縮小または廃止して、こちらに移行してはどうか」

厚労省も「省庁内部で法改正も含めた制度の見直し等を検討している段階」(社会・援護局保護課)だという。財政赤字が膨らむなか、すでに破綻しているに等しい生活保護制度。思い切った改革が早急に必要なことだけは間違いない。

※週刊ポスト2011年3月11日号

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