国際情報

サンデル流対話講義広がれば「日本の教育は激変」と大学教授

 私は、こうした対話型講義がどんどん広がっていけば、日本の教育現場、ひいては日本社会全体を変えていくことになると確信しています。

 今の日本の大学では、詰め込み型の専門科目が優先され、思想や哲学を土台とした教養科目は形骸化しつつあります。教養科目をどう教えていいのか分からないという教師も少なくありません。

 しかしこれでは「自分で考える」「他人と議論する」といった基本的な訓練ができないまま、学生たちが卒業してしまうことになりかねません。

 対話型講義が最も効果的に機能するのは、まさにこうした教養的な科目です。専門性はそれほど深くないにしても、一般の市民が議論するようなトピック(論題・話題)を扱うので、入学したばかりの大学生が議論をするには最も適切なのです。

 サンデルがそうであるように、同書に登場する先生方は、そう簡単には答えが出ないけれど、誰もが必ず直面するような問題にトライして、学生たちの活発な関心を引き出しておられます。こうした議論を体験した学生は、専門分野に進んだ時にも、いきいきと勉強するようになると思いますし、また社会に出ても創造的な仕事ができるはずです。

 しかし教師にとって対話型講義を実践するのは、それほど簡単ではありません。失敗した時のリスクを考えると、いきなり実践するには勇気が必要です。

 まずはサンデルや同書に登場する先生方の手法を模倣してみるのも一つの方法です。また最初から講義をすべて対話型でやる必要はなく、部分的な対話型から始め、だんだんその割合を広げていくのもいいでしょう。

 一方で対話型講義がどんな講義でも適用できるかという問題があり、私は、特に対話型講義に向いている領域と、必ずしもそうでないものがあると思っています。法学などはテクニカルな学問なので、細かな条文解釈などを全部対話型で教えるのは難しいと思うし、高度に専門的な講義では、ある程度知識を伝達した上でないと、議論が成り立たないこともあるでしょう。

 ただ、これまで対話型講義に向かないと思われがちだった理系の領域でも、同書には掲載されていませんが、公立はこだて未来大学の講義「現代の科学」を見ると、十分可能性が感じられます。

※SAPIO2011年3月30日号

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
金正恩(中央)と娘の金ジュエ(右)。2025年6月29日に撮影され、2025年6月30日に北朝鮮の国営通信社(KCNA)が公開した写真より(AFP=時事)
《“爆速成長”と注目》金正恩総書記の13歳娘が身長165cmに!北朝鮮で高身長であることはどんな意味を持つのか 
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
【頻発するクマ被害】オバ記者が出会った2人の“クマ関係者”、バツイチ猟師が明かした害獣駆除の難しさ「キツイのは世間体だよね」
女性セブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト