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東電内に“関電から電力の施し受けたくない”という考えあり

 3月に実施された計画停電は大混乱を招き、東京電力の存在意義である「安定供給」は、完全に崩壊したが、同時に東電の電力危機は別の問題も白日の下に晒した。
 
 西日本各社の11年度「供給予備力(余剰電力)」の合計は1348万kw(送電線が繋がっていない沖縄電力は含まない)。夏期に予想される東電管内の不足分にほぼ相当する。ならば、関電や中電から余剰電力を分けてもらえばいいじゃないか―そう思った人は多いのではないか。関電はこう説明する。

「東電への融通は最大限行なっている状況です。弊社を含めた西日本の電力会社全体で最大100万kwを供給しています」(地域共生・広報室 報道グループ)
 
 だが、東電管内の今夏の電力不足は1000万kw超と見込まれているから、100万kwでは焼け石に水だ。しかし、関電にはもっと余力があるはずだ。「あるのに渡せない」ことには、以下のような理由がある。
 
 東日本(東電、東北電力、北海道電力)の電気は周波数が50ヘルツ、西日本(関電、中電など)は60ヘルツのため、変換をしなければ西日本で使用する電気を東日本に供給できない。変換装置を備える変電所は東電、中電などが保有する3か所(東清水変電所、佐久間周波数変換所、新信濃変電所)のみ。その変換能力の合計が最大100万kwというわけだ。
 
 ならば、変電所を増設することはできないのか。東電の藤本孝・副社長は記者会見でこう説明した。
 
「10年程度の時間と1000億円単位の費用がかかる。東電の管内で発電所を増やした方が早い」

 だが、現に稼働中の装置はあるのだから、一から開発に取りかかるわけではない。専門家からは「増設ならば時間はかからないはず」との指摘もある。大山力・横浜国立大学教授(電力システム工学)は重要な指摘をする。

「装置は量産できませんが、製造に10年もの時間を要するわけではありません。ネックとなっているのは用地問題でしょう」

 変換施設自体に要する用地は約3000平方メートルとされる。一般的なサッカーコートの半分以下だ。しかも市街地に設置する必要はないので、用地の確保も、それほど難しいとは思えない。では、東電が建設をためらう本当の理由は何か。

「変換施設から引く高圧送電線の鉄塔や、電圧を下げる変電所などの用地を収用するのに時間を要し、地域住民との折衝にカネがかかる」(東電関係者)

 要するに“地上げ資金”の問題なのだ。これまでのやり方が、今になって危機対応の足かせになっている。そして最大の問題は、東電と関電の複雑な関係にある。東電の元幹部が語る。

「東電内には“関電から電力の施しを受けたくない”という考えがある。それは関電も同じ。周波数の違いは、電力会社がそれぞれの地域で独占的に営業することを正当化する絶好の口実なのだから……」

※週刊ポスト2011年4月22日号

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