ライフ

反原発派が賛美する昭和30年代 夏の町に悪臭漂い治安も悪い 

 電力使用制限令により、政府が企業に対して15%の消費削減を義務づけるという社会主義のような暴挙に出たために、企業は節電に四苦八苦し、弊害の方が大きい節電が実施されることになってしまっている。そうした事態に異を唱えるのが、獨協大学教授の森永卓郎氏である。

 * * *
 企業の節電策は従業員だけでなく、消費者にまで影響が及ぶ。物量規制(電力削減規制)をすれば、サービスの質が低下し、商品の多様性が失われ、経済から活力が奪われていくのである。

 旧東ドイツには、ダンボール製ボディと揶揄されたトラバントという小型乗用車しかなかったが、そういう世界にどんどん近づいていく。

 山崎製パンは、工場の被災や震災直後の計画停電の影響で、生産品目を大幅に絞り込んだが、このまま商品をほぼ半減させる方針だという。ランチパックは50種類以上のラインナップがあるが、一時ツナとタマゴぐらいしか売られていなかった。

 市場にある商品が1種類ずつでも生活できないわけではないが、商品の量と選択肢があることが豊かさそのものであり、資本主義のいいところである。企業が節電のために商品を絞り込んでいく行為の行き着く先は、社会主義経済である。

 定期検査中の原発を再稼働させれば、無意味な節電努力は不要になるわけで、なぜ稼働させないのか私には不思議で仕方がない。浜岡原発は停めたから安心だと思っている人が多いが、原子炉内の燃料や使用済み燃料は冷やし続けなければならず、大津波で冷却用電源を喪失すれば福島第一と同じことになる。停めてもリスクはほとんど変わらないのだから動かした方が得ではないのか。

 反原発派の人々は「昭和30年代に戻ればいい」というが、過去の時代は美しく見えるだけで、冷静に思い返せば決していいものではなかった。エアコンはもちろんなかったし、冷蔵庫は氷で冷やす方式だった。

 ビフテキは想像上の食べ物で、町は汚く、夏にはゴミが腐って悪臭を放ち、治安も決して良くはなかった。ろくな医療もなく、日本人の寿命は短かった。私はそんな時代に戻りたいとはまったく思わない。

※SAPIO 2011年8月3日号


関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン