いよいよ夏の甲子園が始まる。『甲子園へ行こう!』『ドラゴン桜』の人気漫画家・三田紀房氏が“甲子園を100倍楽しむ観戦術”を伝授する。
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最近の高校球児は以前に比べて冷めているように感じます。試合後のインタビュースペースの様子を見ていても、泣いたり、仲間と抱き合ったりしているのはほんの5分ぐらいで、すぐに携帯電話をいじりだす。大切な野球道具を詰め込むバッグを投げ散らかしているチームもあります。
マナーが徹底されていないチームは試合でも雑なプレーが目立ちますし、すぐにプレーを諦めてしまう。その象徴が眉毛です (笑)。少しでも格好つけようと、眉毛を極端に細くした球児のいるチームほど規律が乱れがちですね。
監督が選手を厳しく指導できない現実もあるのかもしれません。最近では監督の指導法にクレームをつけるモンスターペアレンツが多いようです。また、そういった親御さんは出身のリトルやシニアのチームに告げ口をして、すぐに「あの高校には選手を送るな」となるそうです。
スカウティングに力を入れる高校は、選手の両親や選手の供給先である出身チームの顔色を窺っているために、監督が選手に厳しく接することができない傾向にあるようです。野球のマナーが崩れるのも仕方ないのかもしれません。
一方で、興南 (沖縄)のように「スカウティングは一切行っていません。来たければ努力してください」というスタンスの高校の方が、選手への指導も厳しくできるのです。
こうした高校が春夏連覇を達成するわけですから皮肉なものでしょう。甲子園は、選手の能力だけでは勝てません。
【プロフィール】
みた・のりふさ/1958年、岩手県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、一般企業勤務を経て漫画家に。主な作品に高校野球のリアリズムを追求した『クロカン』『甲子園へ行こう!』、東大受験を題材にして社会現象となった『ドラゴン桜』など。現在、週刊ヤングマガジンで、埼玉県の公立校が甲子園を目指し奮闘する球児を描いた『砂の栄冠』を連載中。
※週刊ポスト2011年8月12日号