国内

小沢批判を18年続ける日本メディアをオランダの大学教授批判

民主党代表選が本格化する中で、またぞろ政・官・報から「反小沢」の大合唱が巻き起こっている。この“恒例行事”を、「日本の歪んだ民主主義政治の象徴である」と喝破するのは、長年にわたって日本政治を研究し続けてきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学教授)だ。

* * *
私は30年以上にわたって日本政治、そして日本と国際社会との関係を取材・研究してきた。その立場から自信を持っていえることは、現在の日本は、民主主義国家としての命運を左右する重要な転換期を迎えているということである。

その最大のキーマンが小沢一郎氏だ。私は現在の日本政治において、本当の意味での改革を成し遂げられるのは彼以外にないと考えている。

しかし、民主党の代表選がいよいよ始まろうとする中で、小沢氏に対して再び官僚や新聞・テレビメディアによる攻撃が強まっている。私は『誰が小沢一郎を殺すのか?』(角川書店刊)の中で、繰り返される「反小沢キャンペーン」が、いかにアンフェアで悪意に満ちた「人物破壊」を目的としたものであるかを論じた。

もちろん他の国でも、政敵に対するネガティブキャンペーンはある。だが、小沢氏に対する攻撃は、1993年の自民党離党・新政党結成以来18年の長きにわたって続いてきた。これほど長期にわたって個人を標的にした「人物破壊」は世界に類を見ない。

日本では少しでも小沢氏を擁護する発言をすると、大メディアから「小沢の犬」という評価を受ける。それ故に日本では、「小沢支持」を堂々といえる知識人が現われない。

断わっておくが、私は1994年以降、小沢氏とはほとんど会っていない。むしろ、会った回数でいえば菅首相や鳩山由紀夫・前首相の方がはるかに多く、何度も議論を交わしており、政治的にも私は“小沢サイド”に立つ人間ではない。私が訴えたいのは、検察と大メディアによる小沢氏への「人物破壊」は、一政治家のスキャンダル報道にとどまらず、日本の民主主義を後退させるものであるということだ。

私が昨年12月に日本に滞在した時、小沢氏を支援する一般市民が検察への抗議デモを広範囲に行なっていた。だが、新聞、テレビはそれを決して取り上げなかった。

また、去る7月28日に行なわれ、約10万人がインターネットで視聴した小沢氏と私の対談も、大メディアは完全に無視した。その場で小沢氏は「官僚主導の政治から、政治家主導、国民主導の政治に変えなくてはならない」「その代わり、国民の代表である政治家は自分自身の責任で政策を決定、実行しなくてはならない」と語った。しかし、そうした重要な発言も、メディアが報道しなければ国民の政治的現実とはならない。

逆に、些細な政治上の出来事が過大に誇張されて報道された場合、それは重要な政治的現実として国民の脳裏に焼きついていく。一昨年以来続けられてきた「小沢資金疑惑」の報道ぶりは、小沢氏が国家への反逆行為を起こしたとか、あるいは凶悪なレイプ犯罪をしたかのような暴力的な書き方だった。

しかし、読者は新聞記者が書いた意見を、自分たちも持つべきだと思い込むようになる。強大なメディアはこうして情報を独占し、“政治的現実”を作り出して、国民世論に重大な影響力を与えてきた。

※週刊ポスト2011年9月2日号

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン