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明治期に裸婦像見た日本人 「肝心なもの見えん」と怒る人も

西洋絵画では見慣れた「裸婦像」だが、日本に入ってきたのは明治の中期。文明開化の世で広く世界に範を求めた日本の芸術家たちは、春画とはまるで違う、西洋人の描く肉感的でリアリティに溢れた裸婦に衝撃を受けた。

そして黒田清輝、萬鉄五郎、村山槐多ら傑物画家たちが、“わいせつか芸術か”という物議を醸しながら、「女の裸」に挑んでいく。

当時は芸術であることを強調するため、日本人離れしたプロポーションに描いたり、腰巻で下半身を隠したりと、さまざまな創意工夫がなされた。

大正、昭和期に入ると、今度は肉感的な官能美を追求する甲斐庄楠音や、現実にはありえない構図によって「裸を壊す」という造形実験を行なった古賀春江らが登場し、裸婦像も多様化していった。

そんな巨匠たちの傑作90点あまりが、いま、東京国立近代美術館に集結している。現在開催中の特別展「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880―1945」を企画した同館美術課長・蔵屋美香氏が解説する。

「明治期に初めて裸の絵を見た人は、笑うか、『肝心なものが見えてない』といって怒るかの2種類の反応が大半で、そうした時代に多くの画家たちは『芸術としての裸』を確立すべく苦心してきました。

その努力の歴史を紐解くため、当館では描く人、見る人、取り締まる人(警察)、三つ巴の争いの中で生み出された代表的な油彩作品を紹介しています。春画や浮世絵とはまた違う、西洋から来たヌード絵画を日本人画家たちがいかに苦労して描いてきたかがわかると思います」

■「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」

会場:東京国立近代美術館(企画展ギャラリー/東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期:2012年1月15日まで
休館日:月曜日(ただし2012年1月2日、9日は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)、1月10日

※週刊ポスト2011年12月9日号

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