国内

木嶋佳苗被告 3つの事件以外にもあった経営者の「不審死」

2009年に東京、埼玉、千葉で起きた連続不審死事件。「平成の毒婦」木嶋佳苗被告をめぐるあまりにも「不審」で「不幸」な出来事。父親は車で崖から転落死、母親も交通事故で片脚切断、祖父が語っていた「500万円通帳窃盗事件」──。ジャーナリストの安田浩一氏がリポートする。

* * *
木嶋を誰よりも溺愛した母親は現在、(もともと住んでいた)北海道・別海の中心部から離れた西春別の実家に引きこもっている。

母親とはインターホン越しに短いやりとりがあっただけだった。すべてにおいて「答えられない」と話す母親に、せめていまの心境だけでも聞かせてくれと頼んだ。ムキになったような声が返ってきた。

「親としては子どもを信じたいと思っています」

木嶋佳苗が上京したのは1993年4月である。木嶋はピアノ講師や介護ヘルパーなどの仕事を経験した後、2002年に千葉県松戸市のリサイクルショップ経営者と知り合い、同居する。出会いのきっかけは、やはりネットだった。

ケンブリッジ大学留学のために資金援助してくれる人を探している――情報サイトに掲載したメッセージに、リサイクルショップ経営者が食いついた。経営者は結果的に約7000万円もの大金を木嶋に貢いだ。しかし2007年、経営者は店舗2階の浴室で泡を吹いて死んでいるのが見つかった(死亡当時70歳)。これも木嶋が関係した「不審死」の一つとして話題になったが、千葉県警は「事件性なし」と判断。立件は見送られた。

木嶋の虚飾に満ちた生活が始まるのは、その直後からである。ブログに有名レストランでのグルメ体験を綴り、芸能人との出会いを吹聴した。そしてセレブを演じてネットで男たちに近づき、カネを吸い尽くし、ハルシオンで眠らせ、練炭で命を奪ったとされる。「小道具」はきわめて現代的である。その一方で、検察側の主張が事実とするならば、その貪欲なカネへの執着に、あまりにも泥臭い人間の業を思わずにはいられない。

〈3月から私は東京人となります。(略)ああ楽しみ楽しみっと〉

彼女は北海道別海高校の卒業アルバムへ、このようにも書き込んでいた。人より牛の数が多い田舎町で「浮いた存在」だった木嶋が、東京での生活を心底「楽しみ」にしていたことは間違いなかろう。彼女は東京で何を見て、何を失ったのか。公判の行方を注視したい。判決は4月13日にくだされる。

※週刊ポスト2012年1月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?(時事通信フォト)
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?「エンゼルス時代のようなセットポジションからのショートアームが技術的にはベター」とメジャー中継解説者・前田幸長氏
NEWSポストセブン
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
元セクシー女優・早坂ひとみ
元セクシー女優・早坂ひとみがデビュー25周年で再始動「荒れないSNSがあったから、ファンの皆さんにまた会いたいって思えました」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
漫画家の小林よしのり氏
小林よしのり氏、皇位継承問題に提言「皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならない」
週刊ポスト
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン