ライフ

橋下氏が議論に強い理由の一つ 論理的でない突飛な発言にあり

 既成政党に対して国政への進出をちらつかせ、国会への影響力まで持ちつつある橋下徹大阪市長。テレビでは同氏に論戦を挑むコメンテーターたちをことごとく論破し、ネットで若者たちから絶賛(?)されている。橋下氏の“強さの源”はどこにあるのか。氏の戦略と論戦テクニックを、専門家たちが分析した。

 * * *
 橋下氏の“強さ”が目に見えて分かるのは、テレビ番組での議論だ。

 1月28日、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)に出演した橋下氏は、同氏の手法に反論する帝塚山学院大学の薬師院仁志教授に対し、

〈では、今のままの大阪市でいいと思ってるんですか? 大阪をこう変えたいというアイデアはあるんですか?〉

 と強い口調で切り返して薬師院教授の反論を封じ込めた。これまでにも、1月15日には『報道ステーションSUNDAY』(テレビ朝日系)で山口二郎・北海道大学教授を、また、昨年末には、朝日放送の『キャスト』の中で、経済評論家の森永卓郎氏などと対論してやり込めたと話題になっている。

 なぜ名だたる論客たちが、氏に論破されてしまうのか。

 論理学が専門の三浦俊彦・和洋女子大学教授は、「必ずしも論理的だから議論に勝っているわけではない」という。

 三浦教授が注目したのは、『報ステ』の中で、作家の渡辺淳一氏が橋下氏にエールを送ったあとの山口教授とのやりとりだ。一部引用する――。

渡辺:しばらく(橋下氏に)やらせたいな。

橋下:ありがとうございます。問題がある時には現実を知っている渡辺さんのような方に批判を受けるのは大賛成なんですけどね、学者なんて何にも知らないのにね。

山口:小説家が現実を知ってるの?

橋下:知ってますよ、小説家なんて現実知らないと、そんなの売れる本書けないですよ。学者の本なんて全然売れないじゃないですか。

――山口教授の、苦虫を噛みつぶしたような表情……。

「本が売れる・売れないという“自然的な事実”と、現実を知ってるか知らないかということは、別次元のことです。ところが、これを直結させて論じている。これは、論理学的には『自然主義の誤謬』と言います」(三浦教授)

 このような論理的ではない突飛な発言に、論理で返すのは難しい。仮に山口教授が「学者の本は売れないが、現実は知っている」と反論しても説得力がないだろう。

「ここでは橋下氏は、論理学的に言う『通俗的イメージの濫用』もしています“学者は一般社会のことを知らない”というイメージを山口教授に一方的に当てはめて、自身の発言を補強しているわけです」(三浦教授)

“学者なんて……”というレッテルで攻められれば、相手はその「通俗的イメージ」そのものへの反証を含めて応じなければならない。テレビ討論でそんな時間はないから、やはり橋下氏の“強さ”が印象づけられることになる。

※SAPIO2012年2月22日号

関連キーワード

トピックス

TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《TOKIO解散後の生活》国分太一「後輩と割り勘」「レシート一枚から保管」の節約志向 活動休止後も安泰の“5億円豪邸”
NEWSポストセブン
大谷翔平の新投球スタイルを分析(Getty Images)
《二刀流復活》進化する“投手・大谷翔平” 「ノーワインドアップ」と「シンカーボーラーへの移行」の新スタイルを分析
週刊ポスト
中山美穂さんをスカウトした所属事務所「ビッグアップル」創設社長の山中則男氏が思いを綴る
《中山美穂さん14歳時の「スケジュール帳」を発見》“芸能界の父”が激白 一夜にしてトップアイドルとなった「1985年の手帳」に直筆で記された家族メモ
NEWSポストセブン
結婚式は6月26日に始まり3日間行われた(時事通信フォト)
《総額72億円》Amazon創始者ジェフ・ベゾス氏の豪華結婚式、開催地ベネチア住人は「億万長者の遊び場に…」と反発も「朝食17万円、プライベートジェット100機貸し切り」で市長は歓迎
NEWSポストセブン
藤川監督(左)の直訴を金田氏(右)が存命であればどう評したか
阪神・藤川球児監督の「練習着にハーフパンツ着用」直訴で思い出される400勝投手・金田正一さんの言葉「大投手になりたければふくらはぎを冷やしたらアカン」
NEWSポストセブン
「札幌のギャグ男」公式インスタグラムより
《特別支援学級編入を決断した当事者の声》「小3の知能で止まっている」と宣告された中学1年生が抱えた“複雑な思い”「母さんを楽にしてやれるって思ったんだ」
NEWSポストセブン
STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
仲睦まじげにラブホテルへ入っていく鹿田松男・大阪府議(左)と女性
石破“側近”大阪府連幹部の府議、本会議前に“軽自動車で45分ラブホ不倫” 直撃には「知らん」「僕と違う」の一点張り
週刊ポスト
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン