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パステルのポップな原発建屋に「住民は何の疑問も持たない」

日本海に面した北海道唯一の原発・泊発電所

 かつて原発は安全だという「安全神話」があった。雇用増大と経済発展を狙い、自ら誘致した自治体も少なくない。しかし、3.11以降、前提だった“神話”が崩れ去った。今、日本で稼働している原発はゼロとなったが、それでも安全が保証されたわけではない。東芝で30年間、原子炉の設計や安全解析に携わってきた日本システム安全研究所の吉岡律夫氏がいう。

「原子炉を止めてもリスクは残ります。3.11のとき、検査中で停止していた福島第一原発の4号機で、使用済み核燃料プールが爆発事故を起こしたことを思い出してください。問題は、その原発が建っている場所と状況なのです」

 停止した原発を今後どうするのかを早急に決める必要があるが、再稼働の議論は時期尚早だと吉岡氏は語る。
 
「政府が行なっている住民説明会は再稼働ありき。再稼働か否かは、信頼できる専門家が指摘する危険性と、その防衛策まで住民に説明した上で初めて議論できるもの。現状は説明が不足しています」

 日本には全国17か所、50基の商業用原発が存在している。福島第一、第二原発をのぞき、建設中の『大間原発』と高速増殖炉『もんじゅ』を加えた52基を撮影した。本誌カメラマン太田真三氏がいう。

「世界から危険性が注目されている今でも、地域住民は原発のすぐそばで生活しています。原発の建屋は丸みを帯びパステルカラーで彩られていることが多く、見た目はポップ。私などは、凶暴性を隠すためだと穿った見方をしてしまいますが、住民は何の疑問も持たない。それほど生活に溶け込んでいるのです」

 地域住民が原発のそばで生活を続けている以上、猶予はない。彼らが見ている景色は、福島の人たちが見ていたものと同じに違いないのだから。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2012年5月18日号

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