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結婚相手の女性への「彼女は処女じゃなかった」密告で夫悩む

『東京新聞』の前身、『都新聞』で連載「相談の相談」が始まったのは明治39(1906)年12月21日のこと。これが新聞における人生相談の始まりだった。悩みは時代とともに、時代は悩みとともに──伝説の回答傑作選。以下、「妻は処女だったのだろうか」と悩む男性の相談だ。

 * * *
【相談】
 私は本年二十二歳になりますが、先般二十歳になる某女を妻に迎えましたところ、ある知人は彼女を処女でないと申します。

 しかし私は従来女というものについて深く経験したことがないので、その実否を鑑別する知識を有しておりませぬためひとり心を苦しめております。これには何かよき判別法があるのでせうか。

【回答】
 生理学の進歩はむろんこれを科学的に証明する鑑別法を見い出しめてあります。しかしその処女か否かの判定はその処女のときにこそできるのであって、いまや貴下の妻たるその女のすでに処女ならぬのをどうして処女なりしか否やと鑑別がつけられましょうぞ。

 第一その知人の言がはなはだ訝しい。どうしてかような無礼な断案(=案を断定すること)を軽々しく下されたのでせう。科学的鑑別法はかかる判断を「見た所」くらいのことでそんな推定を下すのを許しません。

 記者はその知人の言動を真面目に聞くべき価値のあるものと認めません。 いわゆる一時の戯言(=たわむれにいう言葉)でなければ腹黒い毒言に過ぎんのでせう。 貴下はかかる毒言に心惑って、かりそめにも疑うべからざるを疑い、他人の戯言にもてあそばれて家庭の平和を破るのがごとき不見識のお振る舞いなからんことを切に祈ります。

※相談と回答は『明治時代の人生相談』山田邦紀著(幻冬舎文庫)より転載

※週刊ポスト2012年5月18日号

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