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クレオパトラな女たちの肉声 美容手術の「失敗」は少なくない

 ドラマ「クレオパトラな女たち」の美容外科手術のシーンは生々しさ、リアルさが演出され、「グロいから見たくない」という視聴者もいるかもしれない。だが、ここは大切なポイントと語るのは、作家で五感生活所の山下柚実氏だ。以下は、山下氏の解説だ。

 * * *

 美容外科にやってくる患者と医者をテーマにした、日テレのドラマ「クレオパトラな女たち」(毎週水曜日夜10時)。

 佐藤隆太演じる主人公の青年医師は、借金返済のために、美容外科クリニックに勤めることになる。この医師は、病気でもない身体にメスを入れることに対して、多少の心理的な抵抗感を持っている、という設定です。

 最初は、単なる風俗として、簡単に美容整形をする女たちを素材にしているのかと思いましたが……。

 どうやらこのドラマ、美容整形の肯定的な面だけを強調したり当然のものとして扱うスタンスとは、少し違うようです。「人にとって顔・外見とは何なのか」という永遠のテーマを問いたいのかもしれません。

 手術のシーンは生々しさ、リアルさを意図的に演出しているようです。「グロいから見たくない」という視聴者もいるでしょうが、ここは大切なポイント。

 皮膚を切ったり縫ったりすることは、化粧とは決定的に違う行為。美容整形には、身体を扱う「重さ」が含まれる。ドラマの作り手も、そのあたりのことを意識しての演出でしょうか。

  また、ドラマのエンディングには、「顔」にまつわる質問、例えば「美しい人とは?」が提示され、それについて一般の男性女性が自分の意見を語る、というドキュメント映像が入ります。その中には、「美とは外見ではない」と発言する人も。

 私自身、美容外科手術の患者、数十人に直接会って、「なぜ手術をしたのか」「結果はどうだったのか」「何が変化したか」等についてインタビュー取材を重ねました。成功した人も失敗した人も、裁判を起こした人もいました。さらに美容外科医数十人の取材を含めて、『美容整形「美しさ」から「変身」へ』(文春ウエブ文庫)をまとめた経験があります。

 取材を通して、いくつかの傾向を発見しました。

●手術を、化粧の延長線上のように軽く思っている人が多い。血が出たり、痛んだり腫れるという肌感覚、身体感覚が希薄な傾向がある。そして、手術後に「こんなはずではなかった」とショックを受ける。

●自分が求めている「手術後」のイメージと、医師が抱いている手術イメージとの間に、ギャップがある。そのためたとえ手術が成功しても、患者は思った容姿にならなかった「失敗」と感じ、その姿を自分で受け入れられなくなる。そのケースも含めて、美容外科手術の「失敗」は少なくない。

「簡単にキレイになれる」という広告イメージが溢れかえっている社会。身体加工が「商売」となり、医療行為が金儲けの手段となって、まるで商品を売買するように手軽に「手術」が消費されている現実もあるのです。

 当事者にとって、外見をめぐる悩みは複雑です。他人が判断を下すことはできない領域です。

 漠然と手術をしたいと思っている人もいるでしょう。そんな人は、せめて、現場で何が起こるのか、リアルに知り、じっくりと考えてください。あなたの身体にメスを入れるかどうか、判断を下すのに、じっくり考えすぎるということはないはずです。

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