国際情報

尖閣上陸問題 起訴迫る自民党はまるで昔の社会党と識者指摘

 香港の活動家らが尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島に上陸した問題。中国情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏は日本側の対応に危機感を募らせる。

 * * *
 終戦記念日は日本にとって試練の一日となった。まず隣国・韓国の李明博大統領が天皇陛下に謝罪を求めたのに続き、従軍慰安婦問題での対応を唐突に迫るなど歴史問題を蒸し返して日本への攻勢を強めてきた。

 一方、南では尖閣諸島に香港の活動家らが東京の魚釣島買取りに抗議して不法な上陸を強行したのだった。

 上陸した保釣行動委員会のメンバー5人のほか船内で逮捕された9人を含めた計14人は、最終的に入管法違反で退去強制されることが決まったが、この政府の決定に対して日本国内では「弱腰だ」、「毅然とした対応を」、「法に則って起訴すべし」との意見が盛り上がった。

 毎度繰り返される議論で、思い出すのは昔の社会党だ。原則論を振り回して本当に何か解決に向かうのだろうか。

 今回は自民党が早速政局に利用し、裁判にかけろと民主党に迫っている。外交を政局に利用した民主党の鳩山政権がどれほど日本外交を後退させたかを熟知してる――その利益享受者は自民党だ――はずの自民党が野党になったらまったく同じことをするとは理解に苦しむ。外交・安全保障に関しては政権交代しても継続性を持たせ、互いにこの問題では足を引っ張らないくらいの最低限のルールは持てないものだろうか。

 やはりこの国の政党には党益あって国益なし、その点では民主党も自民党も同じレベルなのだろう。しかも2004年に上陸した反日活動家たちを退去強制にすると判断したのは自民党ではないのか。自党の外交姿勢さえ一貫させられない政党が、どうやって一国の外交を担えるのか。

 また退去強制ではなく裁判という選択のなかで、日本の国益はどのような足し算引き算になるのか。そうした冷静な計算なく、「すべきことする」というのなら、やはり思い出すのは「ダメはことはダメ」のおたかさん(土井たか子元社会党委員長)だ。

関連キーワード

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン