国内

逗子ストーカー容疑者「ネットでの質問リスト」を専門家が分析

 神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人は、元教員の小堤英統容疑者(40)が元交際相手だった三好梨絵さん(33)を殺害後に自殺してしまったために、犯行に至るまでの経緯の解明は果たせなくなった。

 だが、小堤容疑者らしき男が犯行の約1年半前から書き込んでいたとされるインターネットの質問サイトから、普段の生活や犯罪心理の一端をうかがい知ることはできる。

 新潟青陵大学大学院教授(臨床心理学研究科)の碓井真史氏が、投稿内容の一部から容疑者の人物像を分析する。

■分かってもらいたい願望
・婚約を一方的に破棄してきた相手に対して慰謝料を請求することは可能でしょうか? 法律や判例に詳しい方、教えてください(2011年11月、2012年3月)
・一方的な婚約破棄によって鬱病が重篤化した場合、相手を傷害罪として訴えることはできますか?(2011年10月)
・私は、今、何か違和感を感じることが多く、それがストーカー被害によるものなのか判断できません。実際にストーカー被害に遭われた方、具体的な事例などを教えてください(2011年5月)

「本当に婚約破棄の法律や判例が知りたかったのではなく、『自分はこんなにひどい目に遭わされたのだから、慰謝料を請求するのも間違ってませんよね』という怒りを誰かに分かってもらいたかったのでしょう。だからこそ、何度も同じような書き込みをしている。親切な回答や同意を寄せてくれる質問サイトは、容疑者が精神的な満足感を得るのにもってこいだったと思います」(碓井氏)

■大きく報道されたい願望
・マスコミ関係の方に質問です。市橋事件や桶川市ストーカー事件は大きく報道されましたが、一方で新聞の社会面に小さく報道されない殺人事件もあります。両者の違いは何ですか?(2011年10月ほか多数)
・(テレビドラマで出てくる暴行シーンの羅列)人間ってあんなに簡単に気絶するものなのでしょうか?(2011年10月)
・殺人事件を犯した犯人が、逮捕される前に自殺してしまった場合、その後の事件の処理はどうなるのですか?(2011年12月)

「小堤容疑者の思考は、彼女を殺して自分も死ねば、あの世で再び巡り合える――といった無理心中のような純粋さはありません。市橋事件を引き合いに出して小さな報道の扱いにされては困ると思ったのか。自分は彼女をこれほど愛し、その結果、傷ついたという気持ちを広く世間に知らしめたかったのでしょう。ある意味、自己愛強さゆえに“表現としての犯罪”という側面があったのかもしれません」(碓井氏)

■かまってもらいたい願望
・104の電話番号案内では、どこまで住所が分かっていれば、番号を教えてくれますか?(2011年10月)
・逗子市に在住の方に質問です。小坪六丁目にあるお寺は何というお寺ですか?(2011年10月)
・日本シリーズ第5戦について質問です。ソフトバンク対中日戦は、何対何でどちらが勝つと思いますか?(2011年11月)
・最近、一人暮らしを始めて自炊するようになったのですが、包丁が安物だけに切れが悪くて困っています。包丁ってホームセンターに行けば売っていますか? それとも問屋街に行かないと買えないのでしょうか?(2012年11月4日)

「小堤容疑者は一般常識も持ち合わせ、頭がいいと思わせる半面、そんなことまでネットで質問するのかと呆れてしまう内容もある。例えば、逗子の神社だって104の掛け方だって、すぐに調べたり自分で電話したりすれば解決するはず。また、普通の社会生活を送っていた教師が包丁の売っている場所を本当に知らないはずがありません。おそらく、何気ない話題でも気軽に聞ける友達がいなかったのでしょう。日本シリーズの結果を不特定多数のネット住民に聞くあたり、普段の孤独さが滲み出ています」(碓井氏)

 最後に小堤容疑者の総合的な人物評価について、碓井氏はこう推察した。

「殺人、そして自殺を考えている割には、投稿文面は低姿勢でていねいな言葉も使っています。いつも対人関係は礼儀正しく、気が弱い面がある一方、独り善がりで他人にかまってもらいたいという願望が強い。そうしたコミュニケーションがうまく取れないと、内に秘めた激しい感情や冷酷さは押さえがきかなくなる。結局、そのマグマが噴き出して犯行に及んでしまったのだと思います」

関連キーワード

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン