国際情報

米国では体罰受けた生徒が30年で150万人から22万人に減少

 日本だけでなく、アメリカでも体罰は問題となっているが、ぞの是非については意見が分かれている。在米ジャーナリストの武末幸繁氏が報告する。

 * * *
「停学処分は休みを与えるだけで、勉強も遅れる。体罰なら15分で教室に戻れる」

 体罰の“効用”についてそう述べたのは、米サウスカロライナ州のカルホーン小学校の校長である。同校では窃盗や喧嘩など「重大な非行」を行なった児童に対し、校長が長さ60cmほどのカヌーのパドル状の板で臀部を3回叩く体罰を行なっている。女児の場合は女性の事務長が行なう。

 米国の学校では、生徒への懲罰としてパドルで尻を叩くことは1960年代までごく普通に行なわれていた。現在では首都ワシントンとニューヨーク州など31州が体罰を禁じている(ただし私立まで禁止しているのは2州のみ)。

 体罰を容認しているのは前出のサウスカロライナ州など南部を中心とする19州。「臀部を3回まで」パドルで叩くことが認められているアラバマ州・アレキサンダーシティー学校区では、小学生までは長さ約19cm×幅約9cm×厚さ約0.6cmのものを、中高生には長さ約33cm×幅約13cm×厚さ約1cmのものを使う、などパドルのサイズまで厳密に定めている。しかし、それらの州でも体罰に納得しない親が訴訟を起こすことがある。

 一昨年、テキサス州・シティビュー高校で男子生徒が問題行動を起こし、副校長からパドルで臀部を叩かれた。病院で手当てを受けるほどのケガをしたため親が苦情を申し立て、州議会で体罰の是非をめぐる公聴会が開かれた(体罰禁止には至らず)。

 現在、テキサス州とノースカロライナ州は保護者が個別に体罰を拒否できる制度を導入している。市町村や教育委員会レベルで独自に禁止しているところもある。米教育省によれば、米国での体罰は減少傾向にあり、体罰を受けた生徒の数は1976年の年間約150万人から2006年には同22万人になった。

※SAPIO2013年4月号

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン