国際情報

尖閣付近無人島の所有者 中国との売買交渉中に殺害されていた

 日本政府は4月10日、尖閣問題で中国を牽制するため、台湾との間に、台湾漁船の尖閣海域での漁業権を認めた日台漁業協定を結び、日本では外交成果として大きく報じられた。ところが一方の台湾では、そのニュースよりも、最近起きた「ある殺人事件」に注目が集まっている。
 
 事件の経過は、多くの謎に満ちていた。2月16日、国内外に多くの土地を所有する資産家として知られた陳進福氏(79)とその妻(57)が失踪。ほどなく2人は台湾北東部・新北市八里区の川辺から水死体で発見された。

 胸部に多くの刺し傷があったことから、警察は殺害後、川に捨てられたと見て捜査を開始。3月初めには、夫妻が失踪の直前に立ち寄ったカフェの女店長ら4人が殺人容疑で検挙された。

 ところがその後、女店長を除く3人は事件と無関係だとして釈放され、女店長の単独犯行が有力となった。警察は女店長と資産家夫婦との間に、金銭トラブルがあったと見ているという。「この事件にはいくつもの不可解な点がある」と指摘するのは、台湾在住のジャーナリスト・片倉佳史氏だ。

「警察側は、女店長は陳氏が沖縄の那覇に持っていた別宅を売って得た500万台湾ドル(約1644万円)を奪おうとしたと主張していますが、彼女の供述は二転三転し、事件後の行動でも、すぐにばれる変装をしたり、借金苦なのに即座に多額の保釈金を用意できたりと、不可解な点が多い。そもそも、川に死体を遺棄するなど犯行の手口を見れば、女性の単独犯行とは到底思えません。

 そうしたことから、一部の台湾メディアの記者たちは、『事件はただの金銭トラブルではない』と疑っている。事件の背後に、彼が所有していた『沖縄の無人島』の問題があったのではないか、と取り沙汰されているんです」

 その「沖縄の無人島」とは、西表島の北西2kmに位置する外離島、内離島の2島のことだ。殺害された陳氏は、日本の大学に留学後、沖縄で台湾人観光客向けの土産店を経営して財をなし、1980年代に知人からこの2島を購入した。

 捜査が難航するなか、一部の台湾メディアが報じたのは、陳氏が死の直前に香港の開発集団から「島を買いたい」との打診を受け、交渉の最中だったとの情報だった。ケーブル局の東森テレビは、3月11日放送で陳氏と開発集団との島売買の仲介役を務めたとされる人物との接触に成功している。彼は同テレビの取材に対して、こう語っている。

「昨年9月に日本政府が釣魚島(日本名・魚釣島)を購入した後から、陳氏は島を売りたいと言い出し、香港の開発集団との交渉が始まった。彼らの目的は、島の観光開発だった。昨年の9月と10月に契約の備忘録を取り交わし、具体的な利用法について香港側から人が来てさらに詰めることになっていた。商談が半分まで進んだ矢先に、突然そういう変死事件が起きてしまった。もうどうしたらいいか……」

 同局は、「香港の開発集団は中国の軍関係者の指示で購入を図ったのではないか」と指摘し、島の売買と事件との関連性を示唆した。だが、前出・片倉氏はこの報道にも疑問を呈す。

「仲介人とされる人物はこれ以降、表に現われなくなった。香港の開発集団も、どういった組織なのか情報が出てこない。彼らとの交渉が実際にはどこまで進んでいたのか、陳氏が本当に売却に了承していたのかなど、疑問は尽きません」

 島の売買交渉と殺人事件の因果関係は分からない。一つ確かなことは、2つの無人島の売買交渉の渦中に、陳氏が殺されたということだ。

※週刊ポスト2013年5月3・10日号

トピックス

アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
19歳の時に性別適合手術を受けたタレント・はるな愛(時事通信フォト)
《私たちは女じゃない》性別適合手術から35年のタレント・はるな愛、親には“相談しない”⋯初めての術例に挑む執刀医に体を託して切り拓いた人生
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン