ビジネス

春闘 賃上げ平均は月額67円も自動車業界はひとり勝ちの様相

「アベノミクス効果でどれだけボーナスが上がったか」――注目を集めた連合の「春闘の回答集計結果(第4回)」には、サラリーマンにとって衝撃的ともいえる数字が記されていた。

 4月12日までに会社側から回答を引き出した2314組合の集計結果によれば、賃金の引き上げ額の平均は前年比でわずか月額67円の引き上げにとどまった。

 以前当サイトでは「春闘による賃上げ額は51円で、花見で缶ビール1本飲めば4か月分が吹っ飛ぶ」と書いたが、追加回答によってそれが「3か月分」で済むようになった程度である。

 それ以上に驚くのは、せめてもの期待だった夏のボーナスが、マイナス6255円(688組合の平均)と下がっていることだ。

 賃金事情に詳しい経済ジャーナリスト溝上憲文氏は、春闘の結果をこう見る。

「夏のボーナス額が前年比でマイナスになったのは、回答している労組に電機、鉄鋼、化学など業績が悪化したところが多く、とりわけ中国や韓国に押されて業績が悪い鉄鋼に足を引っ張られた結果と考えられます。

 一方で、夏冬合わせた年間の一時金総額はプラス4万3797円(637組合の平均)となった。これは、満額回答が続出した自動車業界の多くが、年間額しか連合に提出していないから。これでわかるのは、今年のボーナスの明暗は、自動車とそれ以外でくっきり分かれているということです」

 その指摘通り、本誌の85社への調査でも自動車メーカーはひとり勝ちの様相を呈している。トヨタは、5年ぶりに営業利益が黒字転換する見込みで、満額回答の105万円。前年比13万円アップである。日産やホンダも満額回答を勝ち取った。

 マツダも超低燃費技術スカイアクティブの搭載車が好調で、今夏は昨期より平均15万7500円アップの大幅増となった。ところが、50代社員(生産部門)は喜色満面とはいかない様子。

「大幅アップといっても、自動車のなかでうちだけが満額じゃなかった(苦笑)。一日も早く、トヨタやホンダさんのように100万円超えの満額をゲットできるように頑張らなければ」

 なんとも贅沢な悩みである。それと対照的なのは、自動車向けの鋼板を卸す鉄鋼業界である。鉄鋼メーカーが加盟する基幹労連の組合員1人当たりの夏のボーナス平均額は、昨年の69万3157円から3万円以上のダウンとなった。

 業界の雄、神戸製鋼所の広報担当者は率直な悩みを吐露した。

「自動車が好調なので供給量が変わったわけではなく、中国メーカーの供給過剰により鉄鋼が余って、マーケットでの価格が下落したことが大きな要素です。鉄鋼製品の単価は、1割以上下落している。理由は中国の景気減退で、そちらの煽りを受けてしまった」

 中国がくしゃみをすればアベノミクスが吹き飛ぶ。これがグローバル企業の現実である。

※週刊ポスト2013年5月3・10日号

関連記事

トピックス

大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン