ビジネス

特区カジノの成功は中国の「上客」呼び込む計画が鍵と大前氏

 6月上旬に成長戦略の第3弾が発表され、金融緩和と財政出動に続くアベノミクス「第3の矢」のメニューがそろった。安倍晋三首相が口にする「成長戦略」によれば、大都市圏を国家戦略特区に指定して、規制緩和を先行するという。この国家戦略特区制度には将来性があるのか、大前研一氏が検証する。

 * * *
 安倍晋三首相が提唱する「成長戦略」によれば、東京、大阪、名古屋などの大都市圏を「国家戦略特区」に指定して、全国一律では難しい規制緩和を先行させるという。東京都の猪瀬直樹知事は、この国家戦略特区構想を利用してJR東日本の品川車両基地跡地に海外からの企業誘致を進めるため、外国企業の法人税率を20%まで引き下げるという提案をした。

 しかし、そんな不公平なことができるのか?

 特区の中が20%で特区の外は38%となれば、“ロシア化”することが目に見えている。ロシアは外資を優遇したため、ロシア企業の多くが本社をキプロスに移し、“外資”としてロシアに投資するようになった。

 それと同様に、もし「東京特区」の外国企業の法人税率を20%に引き下げたら、会社の登記を日本から法人税率17%のシンガポールに移し、日本国内のオペレーションは法人税率20%の東京特区の中で“外国企業”として行なう日本企業が続出するだろう。

 そうなれば、日本国内の雇用は一部がシンガポールに出て、大半が特区に移るだけである。つまり、成長戦略ではなく“マイナス成長戦略”になってしまうのだ。中国もかつては外資を優遇していたが、なりすましや華僑系の企業が多くなり、結局、今は内外ともに25%の法人税になっている。

 この国際戦略特区では、カジノを中心としたリゾート施設の設置も検討されている。しかし、シンガポールやマカオなど、アジアで成功しているカジノの利益の大半は(マネーロンダリングのために)VIPルームで高額な賭け金を投じる中国人ハイローラーだ。国際戦略特区にカジノをつくったとしても、“訳あり”の中国人たちを大量に受け入れ、好き放題にやらせることができるのか?

 現に、伝統あるオーストラリアや韓国のカジノは、今や平場の客ばかりで儲からなくなって苦しんでいる。日本にマカオやシンガポールよりも中国の「上客」を呼び込む計画まであるのかどうかがカギとなる。

※週刊ポスト2013年7月5日号

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に“騙されやすい度”をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン