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「大学入試は1科目で傑出した人間の能力を伸ばせ」と大前氏

 今、日本中に内向き・下向き・後ろ向きの傾向が蔓延している。これを転換するにはどうすればよいのか? 最新刊『稼ぐ力──「仕事がなくなる」時代の新しい働き方』が早くも話題になっている経営コンサルタントの大前研一氏は、疲弊した日本の高等教育システムを根本から作り直すべきだと提言する。

 * * *
 文科省の学校基本調査によれば、いま日本には782校もの大学があるという(国公立176校、私立606校)。私に言わせれば、そもそも国公立大学は日本全国にせいぜい10校もあれば十分で、これほど多くの大学があるのはナンセンスだ。

 国際競争力が強いスイスやシンガポールには、国公立大学がそれぞれ12校、4校しかない。それで日本を上回る1人当たりGDPを稼ぎ出し、世界的な企業を生み出している。

 さらに、その数多い日本の大学に来ている留学生は半分が中国人で、しかも彼らのほうが日本人学生より優秀なケースが多いという皮肉な状況になっている。実は中国から日本に来る留学生は中国の中では二流である。一流はみんなアメリカに留学する。二流の中国人留学生にさえかなわないのが、日本の大学生の情けない実態なのだ。

 欧米の大学には世界中から留学生が集まっている。たとえばフィンランドでは、小学校から英語教育が進んだ結果、今や大学の授業は大半が英語に切り替わったため、ヨーロッパをはじめ他の国々から留学生が大量にやって来るようになった。要は、大学がグローバル社会の縮図のようになっているわけだ。

 その中で勝ち残っていくのはけっこう大変だが、内外の優秀な人たちと触れ合い、競争しながら切磋琢磨していく環境を与えることが、傑出した人材を育てるためには極めて重要なのである。

 したがって日本は大学の数を減らしてクラスも小さくし、世界中から優秀な留学生に来てもらえるよう、英語による講義をどんどん増やすべきである。

 それと同時に、小学校・中学校の時点から本人が興味を持って才能を示した子供たちについては、その能力に合ったインストラクターを付けて個別指導を行ない、とくに進捗が速い場合は高校・大学レベル、さらには実業レベルの勉強もさせてしまうというテーラーメイドのカリキュラムを導入しなければならない。全国一律の指導要領など、直ちにゴミ箱行きにすべきである。

 日本の教育は「弱さ」のない人間を作ろうとしているが、今の世の中は「強さ」で勝負する時代である。もはや「オール5」の秀才は何の意味もないし、国公立大学を受験する時のセンター試験が7科目もあるというのもおかしい。最高学府としての大学は一つの科目で傑出した人間を入学させて、その能力をどこまでも伸ばせばよいのである。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号

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