暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
100年以上の歴史を誇る夏の甲子園に、かつてない衝撃が走ったのは8月10日のことだった。広島県代表の広陵高校が、2回戦を前に出場を辞退したのだ。
「広陵高校は春夏合わせて50回以上甲子園に出場している名門で、プロ野球選手も数多く輩出してきました。辞退の発端となったのは部内での暴力行為。甲子園で1試合勝ち進んだ後の出場辞退は前代未聞です」(スポーツ紙記者)
学校側の発表によると、今年1月、野球部員が暮らす寮内で、当時の2年生4人が1年生部員に対し「胸や頬を叩く」「胸ぐらをつかむ」といった暴力を伴う不適切な行為をしたという。被害生徒が寮内で禁止されていたカップラーメンを食べたことへの度を越えた“制裁”だったともいわれている。加害生徒たちは謝罪をしたが、その後、被害生徒は3月末に転校した。学校側は高野連に報告し「厳重注意」の措置が取られたものの、その内容は「公表基準にはあたらない」として公にされなかった。
事態が大きく動いたのは、広陵高校が甲子園出場を決めたのと同時期の7月下旬。被害生徒の保護者とみられる人物がSNS上で、イジメの詳細と学校の対応への不満を訴えたのだ。スポーツライターが話す。
「加害生徒を4人とする学校側の認識とは大きく食い違い、10人以上から、正座をさせられて手を後ろに回した上で、100発以上殴られたと主張しました。ほかにも食堂で上級生からふざけて押されたり、風呂場で“クソが!”と罵倒されたこともあったようです。
さらに“便器をなめろ”“(別の部員の)性器をなめろ”という要求もあったと書いていました。あくまで、一方の主張ではありますが、事実なら寮のルールを破った罰としては、あまりに理不尽です」
本来なら、部の運営にかかわる大人が目を光らせなければならない問題だ。
「しかしその保護者とみられる人物は、中井哲之監督からは口止めするような叱責を受け、“優等生ではない”という人格を否定するような言葉もかけられたとSNSで訴えました。また、寮内で加害生徒と接触させないという取り決めも、守られなかったといいます」(前出・スポーツライター)
ネット上では、広陵高校野球部への批判が殺到。最終的に出場辞退を決めた。しかし8月10日、同校の堀正和校長は会見で、辞退理由は不祥事ではなく、学校や生徒への誹謗中傷、追いかけ行為、寮への爆破予告などがあったためとし、このことも世間から反感を買ってしまった。
「“強豪校”のすべてがそうではありませんが、“野球部至上主義”で運営が行われている学校も一部あります。甲子園で上位進出すればネームバリューが上がり、受験者が増えれば学校経営としては正解ですから。甲子園の常連校として全国にその名を轟かせる広陵としても、これまで培ってきたブランドに傷をつけたくないという思いで、SNSを悪者にし、野球部の不祥事から目を逸らそうとしたのかもしれません」(前出・スポーツ紙記者)