ライフ

森内俊之竜王・名人「一度でいいから壁を越える経験が大事」

 今、将棋界は「三つ巴の戦い」といわれる。棋界の頂点に立つ森内俊之竜王・名人を筆頭に、その同期の羽生善治三冠(王位、王座、棋聖)、そして一世代下の渡辺明二冠(棋王・王将)で7つのタイトルを分け合う状況だ。
 
 20歳前後で初タイトルを獲得している羽生三冠や渡辺二冠と違い、森内竜王・名人が初めてタイトルを得たのは31歳のとき。「大器晩成」型のように思えるが、その飛躍のきっかけは何だったのか。新刊『覆す力』(小学館新書)を上梓したばかりの森内竜王・名人が解説する。

 * * *
 25歳のとき、名人戦で羽生さんに挑戦しました。羽生さんが七冠王だった時期で、1勝4敗で負けました。この七番勝負のときは、どこから攻めても守っても、最後にはやられるという感じでした。羽生さんの手のひらの上で転がされているような感覚です。

 名人戦は七番勝負。4つ勝たなければいけないわけです。羽生さんとやって1つは勝てても4つ勝てる気は全くしなかった。それからしばらくは、トーナメント戦で挑戦者の座が近づいてくると「また羽生さんと戦わなくてはいけないのか」と考えてしまい、結果としてタイトル戦から遠ざかってしまったこともありました。

 そんな状況が変わったのはいくつか理由があります。私から見ると、絶対的な強さに思えた羽生さんから若手棋士がタイトルを取り、自分にもやれるのではないかと思えたことも大きかった。

 もちろん地道な将棋の研究も大事で、自分の将棋も見直しました。私は序盤に時間も体力も使い過ぎていたので、これを改め、後半に時間と体力を温存するようにしました。それから、自分らしくのびのび指すように心掛けました。
 
 その結果、31歳で名人位を当時の名人・丸山忠久九段から取ることができました。初めての名人位は1期で失いましたが、一度“名人”を経験したのは大きかったです。越えられないと思っていた名人の壁を越えられた。

 壁は越える瞬間が一番大変で、一度越えれば「また越えられる」と思えます。私にとっては、たった一度のタイトル獲得の経験が大きかった。とにかく一度でいいから壁を越える経験をすることが何事においても大事だと思います。

 正直、かつては、羽生さんと同世代であるということを不運に思ったこともありました。しかし今は、羽生さんや同世代の棋士がいたからここまで来られたという、感謝の気持ちしかないですね。

※森内俊之/著『覆す力』(小学館新書)より

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン