――それほど苦労しても、中国人はネットを止められないんですね。

井上:それでも中国人はものすごい勢いでネットをやり、ネットが世論を作っているのは間違いないです。一方で日本のSNSは現状、社会への影響が大きくない。たとえば、都知事選で結局、SNS の影響は感じられなかったでしょう?

――実際の投票行動には全然、結びつかないですね。

井上:小泉進次郞議員がSNSをやらないと公言しているのは、私は正しいと思います。彼はドサ周りこそが政治を制するのだと信じている。この考え方は、日本では今のところ間違っていないと思います。

 一方、中国ではSNSで世の中は変えられる。少なくとも中国共産党はそう信じてるんです。だから当局は5~6万、協力者も含めると何十万という人員にネットを監視させている。軍事費のかなりの部分を投入してネット世論の監視に努めている。

――中国の軍事費が増加し続けていることは世界中から関心を集めていますね。

井上:中国はロシアの戦闘機Su-27SK「フランカー」に独自の改造をして、殲撃11型として生産していますが、なんとライセンス料を払ってないんです。ロシアは知的財産権の侵害だとして訴えました。中国との協議の末、第三国への輸出禁止までは持って行けた。でも、中国国内の配備は止められなかった。ライセンスなしで生産しているので、この海賊版フランカーが何機あるのかは、正確には分からないんです。

 海賊版フランカー(殲11)の他にも、スホーイ33MKK、殲15等の最新鋭機、中国国産の殲撃10型も改良型(J-10B)に置き換えられつつあります。防衛白書によると中国の戦闘航空機は約2580機で日本の約10倍です。未だに国産エンジンの不安定さやレーダー警戒網のずさんさ、パイロットの練度不足等の問題があるようですが、テレビで誇らしげに空母の遼寧などが映る勢いの良さをみると、正直「大丈夫かな?」という気にはなります。

■井上純一(いのうえじゅんいち)1970年生まれ。宮崎県出身。漫画家、イラストレーター、ゲームデザイナー、株式会社銀十字社代表取締役社長。多摩美術大学中退。40歳で結婚した20代の中国人妻・月(ゆえ)との日常を描いた人気ブログ『中国嫁日記』を書籍化しシリーズで累計65万部を超えるベストセラーに。2012年4月から広東省東莞市在住。著書に『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(監修・矢澤真人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス)など。最新刊は『中国嫁日記』3巻(KADOKAWA エンターブレイン)。

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