同書の作者で米国在住の余傑は著名な反体制作家で、ノーベル平和賞受賞者で現在も服役中の劉暁波らと活動をともにし、民主改革を求めた「08憲章」にも署名している。姚の息子の姚勇戦は「この本は習近平ら指導部が民主化推進をいかに妨害しているかを中心に書いたもので、当局は同書出版の情報を得て父に圧力をかけたが、父が拒否したことで逮捕した。何とか助けたい」と語っている。

 香港では昨夏、博訊出版社が習近平の女性遍歴を綴った『習近平情史大全』というタイトルの本を出版しようとしたことがある。同社は7月19日付で「1週間以内に香港で発売」とネット上で予告していたのだが、それから半年以上経った今も発行されていない。出版関係者によると、当局から圧力がかかり、出版社側が「自主的に出版を差し止めた」という。

 中国本土ではもっと報道機関への圧力が露骨で、2月には記者証更新のための試験が行なわれ、25万人のジャーナリストが受験。この試験のために、昨年10月から会社ごとに研修が実施されており、「マルクス主義新聞観」といったイデオロギー色の強い分野も課題に入った。試験に名を借りた思想統制である。

 そうした規制強化の動きにメディア以上に不満を募らせているのがソーシャルネット企業だ。IT企業家らは北京訪問中のジョン・ケリー米国務長官と対談した際、「米国は影響力を行使して中国政府にネットの規制緩和を呼びかけてほしい」と求めた。インターネットによって世界がボーダーレス、自由化に向かうなかで、習近平指導部が国際的な動きに逆行することは、彼らのビジネスにとって致命的なのだろう。

※SAPIO2014年4月号

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