折しも3日と5日にそれぞれ北京で開幕した中国人民政治協商会議(政協)と全国人民代表大会(全人代)では冒頭、委員らが犠牲者の霊を弔うために黙祷をするという異例の開会となった。
筆者は当時、たまたま北京を訪問していた。北京では北京南駅をはじめ、空港や天安門広場、人民大会堂などの重要施設など20か所近くを武警が24時間態勢で警備しているほか、地下鉄やショッピングモール、ホテルなど市内各所を自動小銃などで完全武装した武警数人が一組になって巡回するなどの対応ぶりだ。また、訪れた天津市でも、市内各地で警備に当たる完全武装の武警部隊にたびたび遭遇した。
昆明事件からほぼ1か月後の4月30日には新疆ウイグル自治区のウルムチ駅で爆弾が破裂し、3人が死亡し、79人が負傷するという惨劇が起きた。さらに、その6日後の5月6日には広東省の広州駅でも男が刃物で乗客らに切りつけ6人が負傷する事件が発生した。
翌7日付の中国英字紙チャイナ・デーリーは3件の事件について、「驚くべき類似性があり、中国全土に衝撃を与えた」と伝えた。今後も中国各地の主要駅で同様のテロ事件が繰り返される可能性は否定できない。
このため、中国の警察トップ、郭声コン(「王」へんに「昆」)・公安相は6日夜には湖南省長沙に飛び、長沙駅を視察した。同省次官で北京市公安局長を兼務する傅政華氏は北京市内の各駅を巡回。やはり同省次官の劉彦平氏は上海に赴き、上海駅や近隣の江蘇省蘇州駅などを回り、厳重警備を指示した。
中国各地では駅構内やショッピングモールなどで、「通り魔だ」と一声叫ぶと、数百人の群衆が一斉に悲鳴を上げ、われ先に逃げ出すなどのパニック状態に陥る現象が多発しているという。
中国が「第2の中東」と化すのかどうかは即断できないが、「中国はテロに怯えている。それだけでも実行犯の目的は達したのではないか」というのが偽らざる実感だ。