アール・ビー・エス証券東京支店チーフエコノミストの西岡純子氏は、「社会保障関連の収支を安定させるには10%では不十分です。時間はかかると思いますが、20%まで引き上げねばならないと考えています」と再々増税を主張する。政府の役人と全く同じ言い方だ。

 では8%への増税が消費低迷と景気悪化を招いた事実をどう見ているのか。賛成派の土居丈朗・慶応大学経済学部教授はこう持論を展開する。

「景況で一喜一憂すべきでない。税率引き上げは中長期的に見て、今を生きる世代が負担を増やして消費を減らす分、若年世代や将来世代の負担軽減と消費の増加をもたらす。巨額の政府債務を付け回してその償還財源負担から将来世代の消費を減らすという痛みに鈍感で、目先の消費減少ばかり敏感なのでは無責任。早期に税率を引き上げないと高齢世代が負担から逃れ、社会保障の受益と負担の世代間格差がさらに拡大し、取り返しがつかなくなる」

 その上で、実質賃金の低下にはこう反論する。

「それは全労働者平均で見たものにすぎない。大企業の正社員の実質賃金は上昇傾向に転じており、実質賃金が下げ止まらないことを理由に引き上げに反対したり延期を主張したりすることは、森を見て木を見ない議論で事実誤認である」

 現実には増税分のほとんどは社会保障に使われず公共事業にバラ撒かれているのだから、「世代間格差の是正」など机上の空論だ。まして「木=大企業正社員」が良ければ「森=国民全体」は悪くても良いとは、なかなか思ってもいえない“見識”である。

※週刊ポスト2014年10月24日号

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