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ライター稼業と原稿料 100万部編集者から渡された封筒には

 ひと晩考えました。知らんぷりしてて、あとから請求されたら「さーせんww」という感じで戻せばいいのではないか。いやでも落ち着かない。

 結局、自ら編集者に電話して「貰いすぎている」と正直に申告することにしました。そのときの彼の第一声が忘れられません。

「良かったじゃないですかあ」

 と来た。

「なにかの手違いだと思うんですが、編集長も承認のハンコついてることだし、そのまま貰っとけばいいと思います。なにか美味しいものでも食べてくださいよ」

 いったん出した銭は引っ込めねぇ、みたいな。江戸っ子編集者ですか、みたいな。

 原稿料は当たり前の話として、アウトソーシングで仕事をしている・発注している関係はちょっとした金銭のやりとりで信用を失います。ライターは1000円の誤魔化しで編集者から信用を失い、侮られる。また発注する側ももっと敏感になってほしい。私は新人編集者と仕事をするとよくこういいます。

「君は自分が担当した記事が載った雑誌が出たら、仕事が一段落ついたと思うでしょ? 違うねん、私らライターは雑誌が出て、原稿料貰って、初めてその仕事が終わったと感じられるねん。そのタイムラグは自覚しといた方がいいよ」

 仕事に「締切」がある以上、その対価の支払いが「いつでもいい」ということにはならないと思います。

 先日、ベテラン編集者と出張しました。行きは一緒でしたが帰りは別々です。行きの新幹線のホームで、彼が鞄から封筒を取り出しました。

「帰りの新幹線の領収書はこれに入れて送ってください」

 封筒には編集者の住所氏名が書かれてあり、切手も貼ってありました。ライターに82円の切手代も負担させない。この人は100万部の本を2冊作っています。

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