芸能

宝田明 高峰秀子の「教えてあげないよ」発言が役者の魂に

 日本映画の黄金期を支えた二枚目スター、俳優の宝田明はタイプの異なる様々な作品に出演し続けた。初主演映画『ゴジラ』での特撮ならではの芝居の苦労や、成瀬巳喜男監督作品で共演した女優、高峰秀子にかけられた言葉についての思い出を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 宝田明の映画初主演作となったのが、1954年の東宝特撮作品『ゴジラ』だった。

「会社からは『これは東宝が社運を賭けて作る映画で、もし当たればシリーズ化したい』と言われていました。さらに、『我々日本人は広島・長崎で核の脅威に遭って、それが忘れられかけた時に第五福竜丸の被曝があった。これは、そんな日本人が世界に向けて発信するメッセージとなる作品だ』とも。

 撮影は手探りの状況でした。特撮と本編の部分を別々に撮影していたので、僕らは円谷英二さんの絵コンテを見ながら演技していました。ゴジラの向きによって、僕らのリアクションも違ってきますから。

 初めてゴジラが撮影所を歩いた時は、怖くて触れませんでしたね。でも、初号の試写でゴジラが白骨化して海の藻屑になって消えていく様を見ていると、彼も単なる破壊者ではなくて、核による被害者の一人なんだと思えました。
 
 被曝して放射能を吐く体質になったのは人間のせいなのに、今度はオキシジェン・デストロイヤーによって葬り去られてしまう。この人間の業を思うとゴジラがかわいそうで。同情を禁じ得なくなって、涙が止まりませんでした。そういう社会状況を背景にした作品だったので、単なる怪獣映画になりえなかったんだと思います」

 宝田は成瀬巳喜男監督の作品にも数多く出演している。『放浪記』で演じた高峰秀子扮するヒロインの夫役も、その一つだ。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト