ビジネス

三井物産「32人抜き」社長の是非 過去の抜擢人事との違いは

三井物産の抜擢人事は奏功するか(左が次期社長の安永竜夫氏)

 年功や肩書きを飛び越えて人材を登用する「抜擢人事」は、こと社長レースともなれば大きな話題となる。

 かつて松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助氏が役員序列の末席にいた山下俊彦氏を後継社長に指名した抜擢人事は、25人のごぼう抜き。“山下跳び”といわれ、伝説となっている。

 今回、三井物産の人事は松下の記録をあっさりと抜いた。安永竜夫執行役員(54)がなんと32人を抜いて社長に就任(4月1日付)すると発表されたからだ。

 しかし、昔なら「○人抜き」という社長誕生のニュースも驚きをもって捉えられたが、今はどうもピンと来ない。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がいう。

「確かに久しく『○人抜き』という表現を聞かなくなりましたね。近年、年功序列よりも成果や業績を重視した人事が行われることが当たり前ですし、最近は経営の意思決定を行う【取締役】と業務の執行を行う【執行役】を明確に分ける会社も増えました。そうした企業は、役員の数は極力減らして、むしろ社外の人材を登用する傾向が高い。

 三井物産の新社長が32人抜きで抜擢されたのは、それだけの人数を飛び越える役員がいたことの表れ。歴史ある大手商社や重厚長大産業の中には、いまだに年功的意識が根強く残り、取締役の多い企業もたくさんあります」

 三井物産は昨年、取締役ではない執行役員も社長に就任できるよう定款を変更したため、柔軟な人事体系で組織を活性化させたい意思はあったのだろう。河野氏も「肩書きよりも、財閥系で10歳も社長を若返らせることは滅多にないケース」と評価する。

 ただ、過去の抜擢社長のケースをみてみると、決して前向きな理由だけではなく、裏の内部事情が潜んでいることも多かった。

「ソニーで14人抜きの社長になった出井伸之氏は、本命の社長候補がスキャンダルで騒がれたために代役登板したのが真相だと言われているし、伊藤忠商事で7人抜きを果たした小林栄三氏やJフロントリテイリングで13人抜いた山本良一氏などは、前任社長が実力会長としてその後も“院政”を敷きやすいよう、社内の権力闘争の狭間に立たされてきた側面もあった」(人事ジャーナリスト)

 また、赤字転落や経営再建が急務になったときの緊急登板の意味合いもある抜擢人事。さて、三井物産の場合はどんな理由だったのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン