西氏自身、受賞後の会見で「ぜひ皆さんも本屋さんへ行って、いろんな本と出会ってほしい」と発言している。
「私は本屋さんには本当にお世話になったし、育ててもらいました。冠も知名度もない『さくら』があれだけ売れたのも、文学賞出でもない私の作品をいつも熱心に読んでくれる書店員さんの力。私が初めて小説に出会ったのも本屋やったし、それが人生を変える出会いになったんです」
特に今は「別に私の作品じゃなくていいから、小説を読まなきゃ絶対もったいない状況」なのだと熱く語る。
「最近は面白い作家が本当に増えているし、私、太宰治をリアルタイムで読めた人がめちゃめちゃ羨ましいんですよ。同時代の作家の作品を、単行本のうちに、最もビビッドな状態で読めるなんて、物凄く幸せなことじゃないですか。
それに本屋さんに行くと、いろんな本が並んでいて、それぞれの世界が屹立しながら、時代を超えて何となく繋がっている。それが私には面白くて、たぶん自分が読んできた世界中の物語に対する感謝の想いが、『サラバ!』でも自然に表われたんだと思います。
歩の親友の〈須玖〉が〈家の中で本開いてるだけやのに、一気に別の世界に行ける〉〈小説だけやない。音楽も、映画もそうやねん〉〈今俺がおる世界以外にも、世界があるって思える〉と言うのは、私がそうやったから。
特に日本語の小説は平仮名と片仮名と漢字があるのがいいですよね。本を開くだけでドキドキするし、私なんて一度のめり込むと一歩も動けなくなる(笑い)」
●取材・構成/橋本紀子
※週刊ポスト2015年2月6日号