ビジネス

トマ・ピケティ『21世紀の資本』のポイントを今更ながら解説

 日本でもベストセラーとなっているトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』。とはいえ、700ページを超す大著だけに、同書を完読するのはなかなか困難だといえる。そうはいっても、何が書いてあるかぐらいは知っておきたい人も多いだろう。今更ながら、同書のポイントを解説する。

●資本主義の幻想を指摘

 従来の近代経済学では「資本主義が発展すれば富は多くの人に行き渡り、格差は自然に解消に向かう」という考え方が常識だった。これに対し、ピケティ氏は「歴史的事実として、資本収益率(r)は経済成長率(g)より高い」と主張。紀元0年から2100年までのrとgの推移を予測し、rは一貫して4~5%台だったのに対し、gは20世紀後半に3.5~4%に達したものの、歴史的に見るとそれは例外で、ほとんどの期間は2%未満だったという分析を示した。

 r>gの関係が成り立つことで格差は広がっていく。さらに「資本市場が完全になればなるほど、rがgを上回る可能性も高まる」などと資本主義の矛盾を指摘している。

 特に米国では、政財界に対する抗議行動として「ウォール街を占拠せよ」運動が広まったように、同書でも米国のデータを詳細に分析して、格差拡大が深刻化していることを改めて裏付けている。

●極端な格差拡大に警鐘

 資本格差が極端に開いていることにも言及。資本所得分布の上位10%が常にすべての富の50%以上を所有しているのに対し、下位50%が所有する富は「まったくのゼロか微々たるものだ」として、一握りの富める者だけが富を独占する極端な構造を問題視している。オバマ政権や安倍政権などは、富める者が富めば、そこから下流へと富がこぼれ落ちる「トリクルダウン理論」を持ち出しているが、ピケティ氏の主張に沿えば、このままいくと中流階級がどんどん下流に落ちていく二極化が鮮明になるだけだという。

●資本所得に対する世界的な累進課税を提唱

 格差解消に向けて、労働所得ではなく資本所得に関する累進課税を強化すべきだと提言。それも一国だけでは資本はより税率の低いタックス・ヘイブン(租税回避地)に逃げてしまうので、世界中が連携した取り組みが理想としている。それによって一握りの富裕層が独占してきた富を分配し、労働者層の底上げにつながるとしている。

※マネーポスト2015年春号

関連記事

トピックス

神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン